不動産投資は物件の選定さえ間違えなければ、『専門的な知識が無くても安定的に家賃収入を得ることができる』という点から、サラリーマンを中心に人気を集めています。
そんな、近年注目されている不動産投資ですが、投資するにあたって避けては通れないのが『確定申告』です。

そこで今回は、確定申告の方法を初心者にも分かりやすいように解説していきたいと思います。
目次
不動産投資における確定申告とは?

確定申告とは、1年間の所得(収入から経費の控除などを差し引いたもの)を確定させ、所轄の税務署に申告手続きをすることです。

以下のような人は、確定申告が必要になります。
- 2つの企業から給与を貰っている人
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
- 不動産投資などの副業から年間20万円以上の所得がある人


しかし、不動産投資からの所得の場合は、給与所得と通算ができるという特徴があります。
そのため、もし不動産投資の所得がマイナスであれば、源泉徴収の中から支払いすぎとなっている所得税の税金分について還付が受けられるというメリットがあります。
不動産投資で確定申告をしなかったらどうなる?

不動産投資に限らず、本業以外に所得があるにも関わらず確定申告を忘れてしまったり、そもそも申告をしなかった場合は、様々なペナルティが課されます。

無申告加算税(期限内に申告をしなかった場合)
不動産投資など本業以外に所得があるにもかかわらず、確定申告の期限を過ぎても申告がなかった場合に課されます。
無申告扱いとなると、本来納付すべき税額が50万円までは15%、50万円を超えた分に関しては20%にあたる額を納付しなければなりません。

過少申告加算税(納める金額が少なすぎや、還付金が多すぎる場合)
申告は期限内に済ませたものの、申告額が過少であるために修正申告や更正があり、不足した税額が発生した場合に課税されるというものです。
加算される税額は、新たに納めることになった税金の10%相当額です。
ただし、新たに納める税金が、当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合には、超えている部分の15%になります。
重加算税(隠蔽など悪質な行為の場合)
意図的な所得隠し、いわゆる『脱税』と見なされるときに課されるペナルティです。
加算される税額も、申告税額が過少だった場合は、過少申告加算税に加えて追加納税額の35%が課されます。

延滞税(期限内に納付をしなかった場合)
期限内に支払われなかった場合に課税されるものです。また、期限内に修正・更正、納めるべき税額が不足していた場合にも発生します。

また、不動産投資に伴って銀行などから融資をお考えの方は、特に信用問題に関わりますので、しっかり申告・納付しましょう。
不動産投資における確定申告は「青色申告」がおすすめ?

不動産投資における確定申告は『青色申告』がおすすめです。青色申告とは、日々の取引を複式簿記の手法に基づいて帳簿に正しく記載し、所得税や法人税を計算して申告することです。

青色申告にするメリットは?
青色申告には50種類以上もの特典が設けられており、その中でも、不動産所得がある場合に受けられる特典をご紹介します。
- 青色申告特別控除を受けられる
- 青色専従者給与を必要経費にできる
- その年の赤字が繰り越せる
青色申告をする際に必要なものは?
青色申告で確定申告をする場合、『青色申告承認申請書』を税務署に提出する必要があります。

また、青色申告は、税制面で特典がある反面、「帳簿の記録」「記帳義務」「書類の保存義務」などがあります。
- 現金出納帳
- 損益計算書
- 賃借相対表など
- 帳簿及び決算関係書類:7年間
- 現金預金等関係書類:7年間
- その他の書類:5年間

なお、「青色申告についてもっと詳しく知りたい」という方は、以下の記事を参考にしてみてください。
不動産投資における確定申告に必要な添付書類


不動産投資で確定申告をする場合、様々な添付書類が必要になるので、必要書類は1年間大切に保管しましょう。


不動産投資で確定申告をする際の必要書類は以下を参考にしてください。
- 源泉徴収票(原本)
- 住宅借入金等特別控除に関する書類
- 保険料などの支払い証明書
- 医療控除の明細書
- 寄付金の受領書
- 青色申告決算書
- 収支内訳書(白色申告者)
給与所得の源泉徴収票や公的年金の源泉徴収票は、「原本」を必ず添付しなければなりません。


また、確定申告以外で源泉徴収票の原本の提出を求められた場合には、源泉徴収票の一番下に記載されている「支払者」へ再発行を依頼することになります。ただ、税務署はあくまで源泉徴収票の「提出先」であるため、再発行を依頼することはできません。


なお、不動産投資では「確定申告書を記入するための書類」というものもあります。
- 請求書や入金明細書、通帳など売上額が記載されている書類
- 領収書など必要経費が記載されている書類


また、事業を営んでいる場合は、売上や経費が記載された書類が必要となります。
さらに、不動産投資家は、家賃や更新料などの『収入金額』と、損害保険料や修繕費などの『経費金額』がわかる書類が必要となります。
これらの「確定申告書を記入するための書類」は、確定申告時に提出したり、添付したりする必要はありませんが、7年間(白色申告は5年間)の保存義務が課せられています。
不動産投資における確定申告の方法とは?


確定申告書用紙を入手する方法は、税務署や役所などまで直接取りに行くか、郵送で送って貰うこともできます。


また、確定申告書には以下の5種類があり、基本的には「確定申告書A」か「確定申告書B」を選ぶことになります。
- 確定申告書A:「給与所得」「雑所得」「配当所得」「一時所得」の4つの所得に特化した申告用紙
- 確定申告書B:すべての所得に対応できるようにした申告用紙
- 確定申告書第三表(分離課税用):株式売買で利益を得た場合などで使用する申告用紙
- 確定申告書第四表(損失申告用):青色申告で純損失の繰越損失を受ける場合などに使用する申告用紙
- 確定申告書第五表(修正申告用):申告漏れがあった場合などに使用する申告用紙




確定申告書用紙は、毎年行われる税制改正に対応した書類を使用しましょう。新しい税制改正に対応した書類でないと、税制の優遇措置などを受けられない可能性があります。
不動産投資における確定申告の手順


不動産投資で確定申告をする際の流れを簡単に説明します。
- 情報を集める(日々の取引/領収書の管理)
- 申告に必要な書類を収集し、チェックする(支払調書・源泉徴収票、医療費控除のための領収書)
- 確定申告書を入手して作成する
- 国民健康保険料や医療費など、控除になるものを計算する
- 管轄の税務署に申告書を提出する
- 税金を納める


法人で不動産投資事業をする場合は、事業年度を何月から何月までと自由に決めることができます。一方、個人で不動産投資事業をする場合は、個人事業の事業年度は1月1日~12月31日と決まっています。そのため、個人事業主は元旦から大晦日までの1年分の会計結果をまとめて、翌年の2月16日~3月15日の期間中に提出(確定申告)します。


期日を過ぎたら余計に税金を払わされることになりますから注意しましょう。
不動産投資における確定申告で知っているとお得な豆知識


最後に、不動産投資における確定申告で知っておくと便利な豆知識をご紹介します。例えば、不動産投資をしている人で、以下のような状態になったとします。
- 長期で入院した
- 自然災害や盗難に遭った
- ふるさと納税をした
- ローンで住宅を購入した
- 扶養家族が増えた
上記に該当する場合は確定申告をしたほうが良いので、事前に確認しておきましょう。また、その場合は以下の物を揃えておきましょう。
- 領収書やレシート、明細書
- 各種控除の証明書(例:生命保険の控除証明書、盗難事故にあった場合は事故証明書等)
- 家計簿等の詳細なメモ書き
- 源泉徴収票
- 支払調書
重要なポイントは、必要書類に漏れがないか丁寧に確認することと、家計簿であっても詳細なメモがしてあるものなら書類として有効になるという点です。


病院へ通院した際の交通費は、領収書がなかったとしても、「診察や治療目的で何月何日に病院に通院して支出した交通費であるか?」がわかる情報が記載されていれば、医療費控除として認められます。
つまり、領収書だけでなく上記のようなメモを詳細に残すように心掛けておくことも確定申告へ臨む上で重要だと言えます。
まとめ:不動産投資をするならば、確定申告の方法は理解しておこう!
不動産投資に必須な『確定申告』について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
確定申告について、最初から完璧に理解できている方はいませんので、少しでも不明な点があったら税務署へ相談することをおすすめします。


毎年必要な事となるので、不動産投資家の皆様は確定申告と上手に付き合っていきましょう。