日本は言わずと知れた地震大国です。
そのため、国内での不動産投資を検討する場合、地震リスクに対する対処法を考慮しておく必要があります。

そこで今回は、地震保険の選び方や地震が起きた際の対処法など、不動産投資における地震リスクについて徹底解説します。
目次
不動産投資をするなら地震リスクを考慮すべき?

最近、大きな地震が頻発している日本ですが、ここ数十年の大きな地震をまとめると次の通りです。
- 大阪北部地震・・・震度6弱
- 熊本地震・・・震度5~7
- 東日本大震災・・・震度7(宮城県)
- 新潟中越沖地震・・・震度5弱~6強
- 阪神淡路大震災・・・震度7

このような地震リスクに備えて、日本では、建物を建築する際の耐震基準が厳しく規定されています。
具体的に、どのような基準が規定されているのかを見てきましょう。
耐震基準とは
現在、日本では新耐震基準という規定が定められています。
・1981年6月1日に改定。
・震度6~7の大地震でも建物が倒壊・崩壊しないこと。
・震度5強程度の地震ではほとんど損傷しないこと。

この地震では震度5強を観測しましたが、28名の死者が出て、7400戸もの建物が全半壊したそうです。
これを受けて、耐震基準が大きく見直され、それまでの規定だった旧耐震基準が、1981年6月1日に新耐震基準に改定されました。
新耐震基準のポイントは、旧耐震基準では「震度5強の揺れで倒壊しない」と規定されていた基準が「震度6~7」まで引き上げられたことです。
実際、2016年に起きた熊本地震では、新耐震基準に変わった後に建築されたマンションは1棟も倒壊しませんでした。

しかし、新耐震基準は、改正された1981年6月1日以降の建物に適用されているだけで、それ以前から立っていた建物の耐震改修工事が義務付けられたわけではありません。
そのため、不動産投資をする際は、投資対象となる物件が新耐震基準を満たしているかどうかが判断のポイントになります。
地震に強い物件に不動産投資する方法



例えば、地盤が弱い場合や何かの施工不良がある場合は、新耐震基準をクリアしていても、地震で倒壊する可能性がないとは言い切れません。
ここでは、地震リスクを最小限に抑えるために、投資対象として検討してる物件がどれだけ地震に強いのか調べる方法をご紹介します。
投資用不動産を探す際は地震歴など過去まで遡って調べよう
インターネット上には、住所を入力すると、そのエリアの地盤の揺れやすさの目安を調べることができるサイトがあります。
例をあげると、朝日新聞社が防災科学技術研究所・地震ハザードステーションのデータを基に作った「揺れやすい地盤」というサイトがあります。
あくまで目安なので「絶対に大丈夫!」とは言えませんが、地震リスクが高いエリアを知るのに有効です。
また、可能であれば興味のある投資用不動産が建っているエリアの昔の地図を見るのもおすすめです。


また、『現地調査』も大切です。
外壁にヒビが入っていたり、築年数の割に劣化がひどかったりすると、新耐震基準を満たしていても、地震に耐えられない可能性があります。
さらに、投資したい物件のすぐ近くに、木造住宅が密集している場合は、地震による火災の規模が大きくなりやすく、延焼被害を受ける可能性も考えられます。
この他にも、国土交通省の「ハザードマップ」は、地震災害だけでなく、水害・火山災害・土砂災害など、あらゆる天災リスクを想定するのに参考になります。
ハザードマップは、災害時の避難経路・避難場所も確認できるようになっているので、実際に地震が起きた時に、入居者の安全をどう確保するかの対策を考えるのにも役立ちます。
不動産投資をするなら地震保険は必須?

地震保険とは、火災保険に付帯して加入する保険で、必ず火災保険とセットでなければ契約できません。


ここでは、「地震保険に加入すべきか?」判断するために、火災保険と地震保険の補償範囲について解説します。
火災保険の補償範囲
火災保険は、次のような原因で被った損害に対して、保険金が支払われるのが一般的です。
- 火災
- 落雷
- 破裂・爆発
- 風災・雪災・雹災
- 飛来物等の落下
- 水漏れ
- 床上浸水
補償範囲は保険会社や契約内容によって異なりますが、火災保険では、火災以外の様々なケースに保険を適用することができます。
ただし、地震が原因で発生した火災による損害や、地震による延焼・拡大した部分の損害については補償対象外になります。
地震保険の補償範囲
続いて、地震保険の補償範囲を見てみましょう。
- 地震や地震による火災
- 地震や噴火による津波
地震保険では、地震による損害だけでなく、地震による火災、噴火、地震による津波も補償範囲になります。

家財に関しては、入居者自身が地震保険に加入していれば補償されます。
保険金額は、セットになる火災保険の保険金額を基準にして、その30%~50%の範囲で設定できます。
限度額は、建物が5000万円、家財が1000万円です。


火災の場合、近隣が類焼することはあっても、街全体が火災で焼失することはほとんどありません。
これに対して、地震は非常に広範囲で大きな被害が発生します。
もし、再調達価格で補償をしていくと、大地震が発生した場合には莫大な保険金額が必要になります。

そのため、巨額な地震損害が発生した場合には、足りない部分を政府が再保険によって支える仕組みになっています。
地震保険は、被害の根本的な回復ではなく、「被害者の生活の安定に役立てること」を目的に考えましょう。
とはいえ、地震が発生して建物が損傷を受けた場合、復旧にはそれなりの費用がかかります。
その原資として地震保険を活用するのは有効でしょう。
また、地震保険料は不動産所得の「経費」として計上することができます。

地震が起きた際に不動産投資家としてやるべきこと

新耐震基準を満たしている物件でも、地震が起きればある程度のダメージを受けることは覚悟しなければなりません。
もし、大規模な地震が発生した場合、不動産オーナーとしてどのような対処をする必要があるのかきちんと理解しておきましょう。
不動産投資家は地震の被害状況をいち早く把握すること
大地震が起きた際にまずはじめに不動産投資家がやるべきことは、居住者の安否確認です。

管理会社に管理を委託していても、大地震の際は、管理会社も営業できなくなる可能性が高いです。
また、オーナー自身も地震で避難している可能性もあります。
そうなると、賃貸契約書や入居申込書が手元にないので、入居者に連絡することができません。
そのため、自分の携帯電話には、緊急時に備えて、居住者の携帯電話番号や緊急連絡先を登録しておき、有事の際にすぐに連絡できるようにしておくと良いでしょう。
続いて、管理会社には「建物全体」居住者には「室内」の被害状況を確認します。

画像や動画を撮影することで、工事業者の手配をスムーズにでき、後の保険請求にも役立ちます。
また、地震が発生してから1ヶ月間くらいは修理業者に依頼が殺到するので、すぐに修繕や復旧ができない場合もあります。
そのことについても、居住者に事前に説明して、理解と協力を得ておきましょう。
損害賠償責任はどうなる?


ただし、被害を防ぐために必要な措置を怠っていたり、地震後の措置が遅れたような場合は、居住者から損害賠償請求をされる可能性があります。
また、所有している建物の外壁が剥がれて、通行人が怪我をした場合などは、オーナーはそれを賠償する責任があります。
こういったケースは、オーナーの過失の有無を問わず、基本的に賠償責任が発生します。

ただ、地震のような不可抗力による損害は、その建物が建築した当時の建築基準を満たしているような状況であれば賠償請求が生じないというのが判例の傾向です。
なお、建築方法や施工方法に問題があった場合、オーナーから建築業者や設計事務所に損害賠償請求をすることもできるので、このことは覚えておきましょう。
まとめ:地震リスクを最優先で投資用不動産を選ぶ必要はない
地震が起きたときの被害は大きいですが、だからといって、地震リスクを最優先に考えて物件を選ぶ必要はありません。
物件を選ぶ際は、地震リスクだけでなく、空室リスクや入居者リスクなど、不動産投資が抱えるリスクを総合的に踏まえて選定することが重要です。
また、地震は天災なので、どんなに憂慮しても回避することは不可能です。
そのため、地震の被害を絶対に受けない物件を探すのではなく、地震が起こっても被害が少なくて済む物件や、カバーできる補償の範囲内で被害が収まりそうな物件を探しましょう。
