不動産投資を検討しているなら、「消費税還付」という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?

しかし、2度にわたる法律の改正で、この節税方法が通用しなくなり、最近は消費税還付の話はぱったりと聞かなくなってしまいました。


そこで今回は、消費税還付の仕組みや消費税還付を受ける方法をご紹介していきたいと思います。
目次
不動産投資における消費税還付の仕組み


消費税とは、物品などを購入した際に消費者が負担する税金のことです
消費税は間接税なので、一般の消費者が税務署へ直接納付をすることはありません。
その代わり、事業者が売上先(消費者)から「預かった消費税」から、仕入先に「支払った消費税」を差し引いて納めます。
そのため、「預かった消費税」より「支払った消費税」のほうが多いと、払い過ぎた消費税は還付されます。

消費税還付の仕組み
不動産投資のためにアパート・マンションを建築した場合、その建築した建物には「消費税」が課せられます。

建築代金が1,000万円(税抜き)だとすると、建築代金にかかる消費税は、現行税制の8%の80万円が課税されることになります。
つまり、投資家は1,080万円を建物代金として支払う必要があります。
不動産投資における消費税還付とは、この80万円を返してもらうのが目標になります。
ところが、アパート・マンションなどは売上は非課税です。
そのため、消費税の課税対象とはならず、原則的に消費税の申告義務もありません。


平成22年3月までは、「課税事業者選択届出書」を提出すれば、誰でも課税事業者となったので、消費税還付申告をすることができました。
不動産は高額な商品なので、消費税還付における節税効果は絶大です。
そのため、多くの不動産投資家が消費税還付申告を行い、不動産投資業界では空前の消費税還付ブームが起こったのです。

なぜなら、自動販売機の売上は家賃収入と違い、すべて課税売上となるからです。
また、このスキームの流れは次の手順で行われました。
- 消費税課税事業者選択届出により敢えて消費税課税事業者になる
- 不動産を購入・新築する
- 家賃収入などの非課税売上を発生させない
- 自動販売機を設置して課税売上を発生させる
- 調整が行われる年に免税事業者または簡易課税適用事業者となる

まず、消費税還付を受けるために、あえて届出をして消費税の課税事業者になります。
消費税の還付額は、売り上げに占める課税売上の割合に応じて決まるので、課税売上の割合が100%になれば支払った消費税が全額還付されます。

自動販売機設置スキームでは、建築現場に自動販売機を設置して、物件の引渡しを年末に設定することで、その年は自動販売機の売上のみを計上すれば課税売上割合は100%になります。
つまり、支払った消費税の全額還付を受けることができるのです。

消費税法上、マンションを取得した後3年後に課税売上割合が著しく低下している場合、還付された消費税を戻さなくてはなりません。
住宅家賃は非課税なので、そのままでは課税売上割合は著しく低下してしまいます。
そこで、調整が行われる年に免税事業者または簡易課税適用事業者となることで、還付された消費税を戻す調整計算の適用を回避するのです。
以上が、不動産投資における消費税還付の仕組みになります。


不動産投資における消費税還付は不可能なのか?

先ほどご紹介した「自動販売機設置スキーム」は、平成28年度の税制改正までは可能でした。
しかし、平成28年にそれまでの消費税還付スキームを封じ込める改正が行われ、「自動販売機設置スキーム」で消費税還付を受けることはできなくなりました。


平成28年年度税制改正大綱抜粋
高額資産を取得した場合における消費税の中小事業者に対する特例措置の適用関係の見直し
1.事業者(免税事業者を除く。)が、簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に国内における高額資産の課税仕入れ又は高額資産の保税地域からの引取り(以下「高額資産の仕入れ等」という。)を行った場合には、当該高額資産の仕入れ等の日の属する課税期間から当該課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度及び簡易課税制度は、適用しない。
(注)上記の「高額資産」とは、一取引単位につき、支払対価の額が税抜1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産とする。
2.自ら建設等をした資産については、建設等に要した費用の額が税抜1,000万円以上となった日の属する課税期間から当該建設等が完了した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間において、上記1の措置を講ずる。
3.その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成28年年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合について適用する。ただし、平成27年12月31日までに契約した締結に基づき平成28年年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合には、適用しない。
ご覧のとおり、平成28年度の税制改正では、調整対象固定資産となる不動産を購入・新築した日の属する課税期間から、当該課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度も簡易課税制度への変更ができなくなったのです。

引渡し事業年度に課税事業者になることで、消費税の計算を可能にします。
建物引渡し時に、一時的に課税売上割合が100%になる状況をつくります。
平成28年年度の税制改正では、従来の消費税還付スキームのStep3が封じ込められたので、この点を工夫する必要があります。

【最新版】不動産投資における消費税還付を受ける方法

平成28年年度の税制改正により、不動産購入・新築時に消費税還付をすると、必ず調整計算の対象となるようになりました。
では、どうすれば消費税還付を成功させることができるでしょう?
そこで、最後に不動産投資で消費税還付を受ける方法について解説します。
不動産投資で消費税還付を受けるポイントは「課税売上割合」にあり!
現行の税制において、消費税還付を受けるには、調整計算されても、還付された消費税を戻さないようにできればいいのです。
そのためには、課税売上割合を著しく変動させないことが重要になります。


理想の課税売上割合としては、1年目→100%、2年目→51%、3年目→51%とし、3年トータルで51%になるようにすることです。
個人でこの状況にするのは難しいでしょうが、既存の法人であれば可能でしょう。
さらに、新規法人で課税売上をコントロールできればベストです。
また、店舗やオフィスビルなど、課税売上となる賃料が発生する不動産については、課税事業者となることで、現在でも消費税還付は普通に受けることができます。
まとめ
税制の改正で、消費税還付の抜け道はなくなりつつありますが、まだまだ可能な方法はあります。
ただ、不動産投資における消費税還付は、税務署も厳しく目を光らせているので、それなりのリスクもあります。
そのため、消費膳還付を受けるために架空売上を計上するなど、消費税法に違反するような脱税行為は絶対にないようにしましょう。
もし、自信がないようであれば、消費税還付に長けた税理士にご相談されることをおすすめします。
