不動産投資の一環として、賃貸経営をしていると、所得税の確定申告を毎年行う必要があります。
確定申告には、「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。
特に、青色申告は税金面での特典が多く、知っておくと何かと得することが多い制度です。
そこで今回は、不動産投資における青色申告を利用した節税のポイントや利用するメリットについて解説していきたいと思います。
目次
青色申告とは

不動産所得がある場合は、青色申告をすることをおすすめします。
青色申告とは、毎日の取引を帳簿につけ、その帳簿に基づいて正確に所得や税額を計算し、申告する制度です。
青色申告の対象になるのは、不動産所得や事業所得、山林所得がある人で、青色申告者は税金の面でいろいろな特典を受けることができます。
不動産所得については、規模が小さくても適用が受けられ、「10万円の控除」が受けられます。
青色申告をする際に必要なものは?
青色申告で確定申告をする場合は、「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。
申請書は、適用を受けようとする年の3月15日までに提出するのが原則ですが、年の途中で新たに事業を始めた場合などは、事業を開始した日から2ヶ月以内であれば、申請書を提出することができます。
青色申告は、税制面で特典がある反面、帳簿の記録や記帳義務、書類の保存義務などがあります。
- 現金出納帳
- 損益計算書
- 賃借相対表など
※上記は特別控除65万円の場合です。複式簿記でない等、簡易な記帳方法の場合は、特別控除は10万円になります。
- 帳簿及び決算関係書類…7年間
- 現金預金等関係書類…7年間
- その他の書類…5年間
帳簿に記載しなければならないのは、賃料などの総収入金額と修繕費などの必要経費です。
帳簿の様式や種類に関しては特に決まりはありませんが、個々の取引の実態に応じて作成する必要があります。
都度記入するようにして、月末には帳簿の記帳内容の確認や領収書などの整理を行いましょう。
青色申告における収入に関する事項
契約上の支払日に「賃貸料」「更新料」「雑収入」等、適宜、項目に区分して不動産の貸し付けによる収入を記入します。
記入する際は「それぞれの事由」「相手方」「収入金額」も記入します。ただし、保存している領収書控などで、その取引の内容等が確認できるのであれば、事由と相手方の記載を省略して、項目ごとにその日の合計金額のみをまとめて記入できます。
ですから、領収書控等の書類は、帳簿等との関係がわかるように整理して保存するといいでしょう。
青色申告における費用に関する事項
費用については「特別経費」とその他の経費の項目に区分し、「それぞれの事由」「相手方」「支出金額」を記入します。特別経費としては次のようなものがあります。
- 給料賃金
- 減価償却費
- 貸倒金(未収賃貸料のうち回収不能なもの)
- 地代家賃
- 借入金利子(建物等を取得するために要した借入金の利子)
- 固定資産等の損失(賃貸している建物等の取壊しや災害による滅失などの場合の損失)
初心者の方は帳簿の記録を難しく感じることもあるかと思いますが、パソコンソフトを使えば簡単に作成できるので、活用するのも手です。
不動産投資において受けられる青色申告のメリット

青色申告には50種類以上もの特典が設けられています。その中でも、不動産所得がある場合に受けられる特典をご紹介します。
- 青色申告特別控除を受けられる
- 青色専従者給与を必要経費にできる
- その年の赤字が繰り越せる
青色申告特別控除を受けられる
不動産所得金額は収入から必要経費を差し引くことで算出しますが、さらに、所得金額から青色申告特別控除により一定の金額を差し引くことができます。
青色申告特別控除で差し引ける金額は、条件によって異なります。
事業的規模の経営を行っており、複式簿記による帳簿の記帳をし、それに基づいた賃借対照表や損益計算書を確定申告書に添付して期限内に提出する場合は、65万円の控除が受けられます。
この場合の事業的規模とは、「室数10室以上または5棟」。駐車場経営の場合は、「50台以上の経営」を指し、それ以外は10万円の控除になります。
青色専従者給与を必要経費にできる
家族と事業を営んでいる場合は、あらかじめ「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出することで、配偶者や一緒に暮らしている15歳以上の親族に給与を必要経費にすることができます。
白色申告にも「白色事業専従者給与」がありますが、青色申告と白色申告とでは給与の上限がかなり違います。
- 白色申告:控除・一人につき50万円まで(配偶者は86万円まで)
- 青色申告:給与・基本的に給与の総額が事業主の所得を超えない。「青色事業専従者給与に関する届出書」に届け出た金額の範囲内。
ただし、青色専従者給与を支払う際には、以下の点に注意しましょう。
- 家族に給与を支払えるのは15歳以上の働ける人のみ
- 家族に給与を支払うにはその人の従事可能な期間の半分以上働くことが条件(アルバイト・日雇いは不可)
- 家族に1円でも給与を支払うと扶養控除は受けられない
- 事業主は毎月給付する給与の額によって決められた源泉税の1年間の総額を翌年1月10日までに税務署に納付する必要がある
- 給料は基本的に年間103万円までは所得税がかからないが、税金が0円でも納付書・源泉徴収票の提出が必要
- 事業的規模である(室数10室以上、または5棟。駐車場経営の場合は50台以上)。
その年の赤字が繰り越せる
計算上生じた不動産所得の損失額は、他の所得と合算して損益通算できます。
さらに、それでもなお引ききれない金額がある場合は、翌年以後3年間にわたり全額を差し引けるまで繰り越したり、前年の黒字の所得に繰り戻して前年の税額の還付が受けられます。
不動産投資の青色申告で忘れがちな節税ポイント

青色申告をしている人でも忘れがちな節税ポイントを紹介します。ここで紹介するポイントは、事業的規模に該当する場合も、該当しない場合も共通していることなのでぜひ確認してみて下さい。
- 固定資産税以外にも計上できる経費がある
- 小規模企業共済に加入する
- 個人年金に入る
- 建物等の修理をこまめにする
固定資産税以外にも計上できる経費がある
青色申告の場合、固定資産税しか経費として計上していない人が意外に多いです。
しかし、収入を管理するために購入したパソコンなど、実は支払っているお金が結構あるのではないでしょうか?全て計上できるとは限りませんが、中には経費として認められるものもあります。
よく分からない場合は、税理士など専門家に相談してみましょう。
小規模企業共済に加入する
小規模企業共済に加入すると、掛金(月額最高7万円)の全額が所得控除の対象になります。
この共済は、掛金を支払った年も節税効果が高いですが、解約時も「退職所得」「一時所得」などになり、税金上かなり優遇されます。
加入条件・解約払戻金等の内容をよく確認した上で、メリットが多いようであれば加入することをおすすめします。
個人年金に入る
生命保険料控除を受けている人は多いですが、個人年金控除を受けているという人は少ないです。実は、こちらも支払額にたいして一定の控除が受けられます。
個人年金は貯金ですので、貯金をして控除を受けられるというのはかなりお得だと思います。
建物等の修理をこまめにする
建物は古くなると修繕しなければならない箇所がいろいろと出てきますが、費用がかかるのでついつい後回しにしがちです。
しかし、修繕することで建物等の価値は高まりますし、修繕費は経費として計上できるので節税対策にもなります。
経費として認められる条件としては次のようなものがあります。
- 支出金額が20万円未満または3年以内の周期で行われるもの
- 支出金額が60万円未満または支出金額が前年末の固定資産の取得価格の概ね10%以下
不動産投資が事業的規模でなくても青色申告をしよう

青色申告の特別控除額の特徴は、現金の支出がなくても所得金額から控除される点です。その分の節税した金額だけお金が手元に残せます。
不動産投資をしている人の中には、事業がまだ小規模だからと言う理由で白色申告をする人がいますが、青色申告の方が受けられる控除額が大きく、計算も簡単なのでおすすめです。
そこで、最後に青色申告がおすすめできる理由をいくつかご紹介します。
青色申告特別控除額10万円が適用できる
青色申告では、間tンな帳簿だけで最大10万円の特別控除を受けることができます。
30万円未満の備品を一括で経費に落とせる
以下の条件を満たすと、30万円未満の備品を一括で経費として落とすことができます。
- 購入代金を支払うこと
- 実際に使用すること
白色申告の場合は、一括で経費に落とせるラインは10万円未満に下がります。
所得金額の計算が簡単
物件・土地など30万円以上の固定資産を除いて、計算は次の通りです。
- 所得金額=【収入金額-必要経費】
- 収入金額=【現預金の入金額】
- 必要経費=【現預金の支出額】
このように、実際の現預金の動きで所得金額を計算することを現金主義といい、通常のように、年末時点で「債権=収入金額」「債務=必要経費」を確定させる手間が省けます。
さらに、不動産所得が事業的規模でない場合は、複式簿記でも小遣い帳でも青色申告の特別控除額は10万円です。
小遣い帳とは、「現金出納帳」のことで、より具体的に言うと、不動産投資用の預金と預金口座のことです。不動産所得の場合、その現預金の出入りを記帳するだけで青色申告ができ、10万円の特別控除が受けられるのです。
小遣い帳でも青色申告できる条件は次の通りです。
- 前々年の不動産所得、事業所得の合計が300万円以下である
- 青色申告承認申請書・現金主義の所得計算による旨の届出書を提出すること
青色申告承認申請書は、青色申告用の書類とは別の書類です。詳しくは、国税庁のホームページを参照ください。
提出期限は、不動産投資を始めた日に応じて、次のようになります。
- その年の1月15日までに開始する場合:3月15日
- その年の1月16日以降に開始する場合:開始日から2ヶ月以内
最後に、小遣い帳への記帳をより簡単にする方法もお伝えします。
- 現金と預金口座を不動産所得用とプライベート用に分ける。
- 預金口座をネットバンキングにすることで預金の入出金をエクセルで取り込めるようにし、現金出納帳の作成を簡単にする。
- 入出金は極力、預金口座を通し、できるだけ現金払いをしないようにする。
- もし、現金払いをする必要がある時は電子マネーを利用し、現金残高の計算が任せられるようにする。
まとめ:不動産投資をしているなら青色申告がおすすめ
以上、不動産投資している場合の青色申告のメリットや節税ポイントについて解説しました。
事業規模に関係なく、不動産投資をしているなら青色申告をした方が受けられるメリットは多いです。
節税以外にも役立つ青色申告
青色申告する際に必要になる帳簿等の記帳は、税金の計算を行うという意味だけでなく、賃貸経営の合理化や効率化を検討する際にも役立ちます。
不動産投資家は、認められる必要経費や税法上の特典を正しく理解して賢く活用しましょう。
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