「REITを始めたい or すでに始めている」という方は、『NAV倍率』という言葉を1度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
NAV倍率は、J-REITを選ぶ際に役立つ指標になります。

この記事では、NAV倍率の特徴や計算方法を株式投資の指標であるPBRと比較しながら解説していきます。
※なお、J-REITとはアメリカで誕生した金融商品REITの日本版のことを言い、ここでは、J-REITのことをREITと以下記述していきます。
目次
NAV倍率とは

NAVとは、「ネットアセットバリュー」の略称で、『純資産価値』のことを指します。

NAVは、REITが保有する不動産を時価評価したものから、借入金や費用などの負債を時価評価したものを差し引くことで算出することができます。
そして、このNAVを投資証券の発行口数で割ったものが「1口あたりNAV」になります。
1口あたりNAVと投資口価格を比較することで、REITの「高いor安い」を判断する材料になります。

肝心のNAV倍率ですが、「投資口価格」を「1口あたりNAV」で割ることで算出することができます。


NAV倍率はREITにおけるPBR
NAV倍率は、現在の投資口価格がNAV(純資産価値)に対して何倍かを示しているため、よく株式の「PBR(株価純資産倍率)」のようなものと言われています。
先ほど、NAVを【REIT保有の不動産の時価-借入金などの時価負債】という計算式で表しましたが、もっと分かりやすく解説すると、以下の計算式で表すことができます。

そして、投資家それぞれが受け取る金額は投資口数に応じて分配されます。
投資口数とは、株式における持ち株数のようなものです。
ここから分かるように、NAV倍率とは、REITが扱っている不動産が売却された時に投資家が受け取れる金額に対して、現在の投資口価格が割高か?割安か?を判断する指標なのです。
NAV倍率の計算の仕方

文章で説明されてもいまいちピンと来ない人もいるでしょうから、ここでは具体的に数字を入れて、NAV倍率について理解を深めましょう。
NAV倍率を理解するポイントは1口あたりいくら受け取れるか

では、具体的に数字を当てはめて考えてみましょう。
不動産(時価)120億円、預金30億円、借入金80億円を抱えているREITがあるとします。
このREITのNAVは、【120億+30億-80億=70億円】となります。
仮に、このREITが1万口の投資口で構成されている場合、1口あたりのNAVは【70億➗1万=7万円】となります。
そして、このRIETの現在の投資口価格が6万円だった場合、NAV倍率は【6万円(現在の投資口価格)➗7万円(1口あたりのNAV)=0.85倍】となります。

NAV倍率の基本的な見方では、NAV倍率が1以下であれば割安、1以上であれば割高と言われます。
NAV倍率の意味

計算式の意味が理解できれば「なぜNAV倍率が1以下であれば割安なのか?」ご理解いただけると思うのですが、ここでは、もう少し掘り下げて考えてみましょう。
NAV倍率の見方
まず、NAV倍率が1以下であれば割安と判断される理由から解説します。
ここで思い出していただきたいのが、NAVはREITが持っている純資産価値ということです。
先ほどの例で考えると、NAVが70億円のREITの場合、1口あたりのNAVは7万円でしたから、1口分投資している投資家には7万円が戻ってくる計算になります。
ここで、NAV倍率が0.851倍だったとすると、この投資家は6万円投資したのに対し7万円を受け取ることになります。

つまり、NAV倍率が1倍を割っている状況というのは、REITが持っている純粋な財産の総額よりREIT市場で評価されている金額のほうが小さいということを意味しています。

もちろん、これは理論上の数値です。
実際には、保有不動産を売却するとなると手数料等が必要になるので、「NAV倍率が1倍を割っているから即儲けが出る」というものではありません。
また、投資口価格は、投資家たちの未来予測価格であることも忘れてはなりません。
NAV倍率が0.851倍ということは、「将来的にそのREITの純資産価値が下がる」と投資家が予想しているとも考えられます。
これは、逆も言えます。
仮にNAV倍率が1.5倍だった場合、「将来的にそのREITの純資産価値が上がり、純資産価値の向上によってNAV倍率が1倍になる」と投資家が予想していることも意味します。
もし、NAV倍率が3倍のREITがあったとしましょう。

NAV倍率はどれくらい信頼できる?

ここまで読んでいただいた方の中には「NAV倍率は『指標』としてどれぐらい信頼できるか?」疑問に感じている方もいるのではないでしょうか?
実際、不動産投資の指標の中には、ほとんど参考にならないような指標も存在します。

一般的に、「NAV倍率はPBRよりも確実」と言われていますが、その根拠をここでは解説します。
NAV倍率とPBRの違い
NAV倍率は、株式投資の指標の1つである『PBR』とよく比較されます。
PBRとは、「Price-Book-Ratio」の略で、「時価総額が純資産の何倍か?」を示した指標です。
例えば、70億円の純資産価値を所有する会社の株が100万株売られていて、株価が1株600円で売られていた場合、PBRは【600円➗700円=0.85倍】となります。


つまり、「本当にその資産が簿価で売れるのか?」ということです。
実際に売却する際に、値下げや廃棄をしなければならないケースもあり、そうなるとその資産の価値は下がり、実際の資産額は減少してしまいます。
また、会社が持っている資産の中に現金化できないものがあったりすると、算出された純資産よりも実際の純資産が少ないということは大いにあり得ることなのです。
これに対し、RIETの資産はほぼ不動産のみなので、正しい時価評価を行うことができます。

まとめ
RIETの銘柄を比較する時には、『現在の取引価格(投資口価格)が割安なのか?割高なのか?』の判断をする必要があります。
RIETはよく判断材料が少ないと言われますが、1つ1つの指標は非常に参考になります。
NAV倍率もその指標の内の1つなので、しっかりと理解して有効に活用しましょう。