2015年の相続税および贈与税に関する改正以降、田舎でアパート経営を目的とする不動産取得が増えています。
しかし、田舎でのアパート経営にはリスクがつきものあり、誰でも簡単に始められるわけではありません。
そこで今回は、田舎でのアパート経営の注意点や成功する秘訣について解説していきたいと思います。
なぜ田舎の賃貸需要が増加しているのか?

最近、田舎でのアパート経営による賃貸需要が増えています。
その理由として、増税となった相続税の対策にアパートを建設あるいは購入する人が増えたことが挙げられます。
2015年1月1日に相続税および贈与税が改正され、最高税率は50%から55%になりました。
さらに、大きなポイントとなるのが、基礎控除額が引き下げられたことです。
2014年12月31日まで(改正前)の基礎控除の金額とどのように変わったのかは、次のとおりです。
- 改正前:5,000万円+(1,000万円✕法定相続人)
- 改正後:3,000万円+(600万円✕法定相続人)
このように、基礎控除額が減少したことにより、相続税が発生する相続金額が引き下げられたので、より多くの人に相続税が発生するようになりました。
その結果、現金よりも相続税評価額を引き下げることができる『不動産』にして相続する人が増えたというわけです。
どれほど節税に役立つかというと、以下のようになります。
- 土地・・・評価額は路線価(路線価はおよそ取得価格の80%程度)
- 建物・・・固定資産税評価額(取得価格の60〜70%ほど)
固定資産税評価額は各自治体が決めるので、明確に何%になるかはわかりませんが、少なくとも現金のまま相続するよりかは、評価額を下げることができるので税金は安くなります。
田舎のアパート経営が失敗しやすい理由とは?

都市部よりも田舎のほうがアパートを入手しやすいことから相続税対策として人気ですが、アパート経営に関してはリスクもあります。
主なリスクは以下の4つです。
- 空室リスクが高い
- 土地ごとに厳しい規制がある
- オーナーの目が届きにくい
- アパート経営に対するモチベーションが低い
空室リスクが高い
アマート経営をするうえで、まず考えるべきは空室リスクです。
都市部に比べると田舎は人口が少ないために賃貸需要も少なく、賃借人をつけるのにも苦労します。
空室リスクが高いために、家賃収入も少なくなる可能性は高いということです。
土地ごとに厳しい規制がある
アパート建築を目的に土地を購入する際には、その土地に規制がないか確認が必要です。
たとえば、市街化調整区域であれば、建物を建てることができません。
これは都市計画を留保しているためですが、住居地域か商業地域あるいは工業地域か、いずれにするのか決まっていないからです。
また、田舎の農地を購入してアパートを建築しようと考える場合、農地は、農地法により簡単に転売できないということも押えておく必要があります。
農地転用での売却が必要ですし、そのためには農地委員会の許可を得なければなりません。
農地のままで購入しても、そのあとに申請が通らずにアパートを建築できないリスクもあります。
オーナーの目が届きにくい
たとえば、都市部に住んでいた被相続人が田舎でアパート経営のための土地を購入し、建物を建てて相続したとします。
相続人がその場所から遠く離れて住んでいる場合には、物理的にまめな管理はできないものです。
そこで、地元の不動産会社などに委託して、アパート経営を任せることになりますが、目が届かない場所であるために管理状態を確認することができません。
賃貸物件の管理状態は、入居率に大きく影響しますし、収益性も左右します。
田舎のアパート経営はオーナーの目に届かないという点もリスクといえるでしょう。
アパート経営に対するモチベーションが低い
もともと相続税対策で始めたアパート経営となれば、それほどモチベーションも上がりにくいものです。
この点も収益性に影響するので、アパート経営のリスクの1つといえるでしょう。
特に、田舎となれば賃借人がつきにくいので、いかにして集客するかが重要です。
管理を委託する不動産会社に任せても、そこまできめ細やかな提案をしてくれるかわかりません。
せっかく相続したアパートでも収益を生み出すことがなければ、次第に建物は劣化して価値を滅却してしまいます。
アパート経営だけじゃない!おすすめ土地活用術4選

田舎でのアパート経営にはさまざまなリスクがあります。
これは、賃貸物件として入居者を限定していることも大きな理由の1つです。
そこで、ここでは、アパート経営以外のおすすめ土地活用術をご紹介します。
- 定期借地
- 駐車場経営
- ソーラー経営
- トランクルーム経営
定期借地
土地を購入してもアパート経営のように建物を建てず、そのまま貸すという方法もあります。
アパートを建てると、借り手を限定してしまいます。
しかし、土地をそのまま貸すことで、そのエリアに合った目的で利用できることから、貸し手に対して有効活用してもらうことが可能です。
定期借地には以下の3つのパターンがあります。
- 一般定期借地権
- 建物譲渡特約付借地権
- 事業用定期借地権
一般定期借地権
一般定期借地権は存続期間を50年以上に設定して、権利が消滅したら更地にして返してもらいます。
長期間にわたり安定した地代収入を得られ、借地人が居住用の建物を建てれば固定資産税は軽減されます。
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権は存続期間を30年以上に設定し、期間が満了したら借地人から建物を買い取ります。
アパート経営やマンション経営をしていれば、そのまま引き継ぐ形になります。
事業用定期借地権
事業用定期借地権は1992年の新借地借家法で創設されたものです。
住宅以外の建物を建てる目的で、存続期間は10年からと短いのが特徴です。
駐車場経営
駐車場経営はアパート経営よりも建築コストがかからず、運用も楽である点がメリットといえます。
もちろん駐車場需要が多いことが大事ですし、固定資産税や都市計画税の評価は更地と変わらないというデメリットもあります。
アパート経営であれば固定資産税は6分の1に、都市計画税は3分の1に軽減されます。
ソーラー経営
田舎は人口流出という課題もあるために、アパート経営で収益を生み出すのが難しいエリアもあります。
また、車の往来も少なく駐車場にも向かない場所なら、『ソーラー経営』を検討してもよいでしょう。
これは、太陽光発電により固定価格買取制度を利用して売電するというスキームです。
買い取り価格は年々減少していますが、世界の脱炭素化を受けて国が再可能エネルギーの普及を進めていることを背景に、今後も安定収入として得られる可能性は十分あります。
トランクルーム経営
アパートも駐車場も、用途を限定するので借り手を選ぶという課題があります。
一方で、自由な使い方ができるトランクルームは借り手を限定しないので多くの需要を見込めます。
運営方法は、大きく次の二種類に分類されます。
- 事業用定期借地方式
- リースバック方式
事業用定期借地方式
まず、土地をトランクルーム業者に定期借地する『事業用定期借地方式』です。
こちらは毎月地代が入るだけなので、通常の定期借地と変わりません。
リースバック方式
次に、トランクルームの設備や建物を建築して、業者に一括借上で賃貸する『リースバック方式』です。
アパート経営におけるサブリース契約のようなものとなります。
また、設備投資や建物建築と経営はオーナーが行い、集客や管理を業者に委託する『業務委託方式』もあります。
さらに、トランクルームにもコンテナ型とルーム型があり、コストや集客力などそれぞれメリットとデメリットが違います。
立地条件も考慮したうえで、どのような形式で行うのかを決めるとよいでしょう。
田舎のアパート経営を成功させるコツとは?

田舎でアパート経営をするならば、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
最後に、田舎でのアパート経営を成功させるコツをご紹介します。
- 田舎の中でも需要の高い都市部を狙う
- 田舎に強い不動産会社を探す
- 築年数の浅い物件を探す
- 新耐震基準のものがおすすめ
田舎の中でも需要の高い都市部を狙う
アパート経営を成功させるか否かは、とにかく賃貸需要に直結する人口の多さにかかっています。
なぜなら、賃貸需要がないエリアでどれほど魅力あるアパートを建てても集客が難しいからです。
そこで、田舎であってもできるだけ都市部に土地を購入してアパート経営をする必要があります。
たとえば、ターミナル駅の近くや商業施設が多い場所には人も集まるので、賃貸需要も見込めます。
また、内閣府発表による資料によると、人口が増加する地方市町村の特徴としては、製造業や商業が集積するのエリアとなっています。
田舎に強い不動産会社を探す
アパート経営では管理において、不動産会社の協力が不可欠です。
しかし、大手だからといって田舎のアパート経営も安心して任せられるかというと、そうとはいえません。
重要なのは地元の賃貸需要について熟知しているかどうかです。
もちろん、大手の業者でも地方に詳しい支店があればよいのですが、いずれにしてもアパート経営を行う田舎の賃貸市場に長けている不動産会社を探すことが大事です。
築年数の浅い物件を探す
アパートに限らず賃貸物件は築年数の経過とともに競争力は低下します。
また、アパートは老朽化も早いので、築年数がかなり古い物件となるとメンテナンスにお金がかかります。
そこで、できる限り築年数の浅い物件を探すことが大事です。
新耐震基準のものがおすすめ
近年の地震増加により、アパートを探す人も建物の耐震性には注意しています。
そこで、入居率を少しでも高めるために、新耐震基準により建設されたアパートを探しましょう。
新耐震基準とは、「1950年に制定された建築物の基準を1981年6月に改定したもの」です。
1978年の宮城県沖地震を参考に、震度6強から震度7でも倒壊しないことを定めた法律です。
この新耐震基準に基づいて建設されたアパートであれば、入居者も安心して生活できます。
まとめ
田舎のアパート経営を成功させる秘訣について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
田舎のアパート経営は、相続税対策になるといったメリットがある反面、賃貸経営特有の空室リスクもあり、決して簡単なものではありません。
そのため、田舎のアパート経営のリスクやデメリットをしっかりと把握しておくことが重要です。
また、アパート経営の代替案として、他の土地活用術も把握しておくと良いでしょう。
本記事の情報を参考に、満足のいくアパート経営を始めてくださいね。
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