他の資産運用に比べ、安定した収益を得ることができると話題の不動産投資ですが、その人気の高さに便乗した『詐欺』がここ最近増えています。
こういった詐欺を未然に防ぐには、詐欺の手口やよくある誘い文句を事前に把握しておく必要があります。
そこで今回は、不動産投資における詐欺の手口や対処法を、事例をもとに解説していきたいと思います。

不動産投資詐欺のよくある誘い文句をご紹介

2020年の東京でオリンピック開催が決まって以降、不動産投資に興味を持った人も多いのではないでしょうか?
「不動産投資を始めてみたい」と考える初心者の方が増えていますが、そういう人をターゲットにした詐欺も増加しています。
新国立競技場の建設問題が落ち着くにつれ、こういった詐欺も下火になりつつありますが、詐欺の口上はいくらでもあります。
例えば、「マイナス金利が導入されて、ローンの金利が格安になった」「円高でアジア不動産がお買い得」など、それらしい理由をつけて不動産投資をすすめてくる詐欺師が後を絶ちません。

まずは、それらの甘い文句を確認していきましょう。
1.「不安ならクーリングオフできますよ」
不動産投資詐欺において、「クーリングオフができるから、不安ならその期間中に契約を解除すればいい」と言って、契約をすすめてくるケースがあります。
ただ、クーリングオフも万能な制度ではありません。

例えば、相手が宅建業者でない場合や相手の事務所などで契約した場合は、クーリングオフの対象になりません。
不動産投資詐欺をする業者も当然このことは知っているので、ここら辺のことは手抜かりがないはずです。
また、契約にまつわるもう一つの危険性として、『手付金』があります。
詐欺師が、「良い物件なので、手付金だけでも払っておいたほうがいいですよ」と言ってくる場合があります。
けれど、手付金は契約を行うことを前提に支払うものなので、購入者の都合で購入をキャンセルする場合には、契約不履行で手付金を没収されることがあります。

契約をするしないに関係なく、事前に契約内容はきちんと理解して行動するようにしましょう。
2.「高利回りですよ」
この言葉で勧誘されたときも詐欺を疑いましょう。
詐欺師の中には、「都心で20%~30%の高利回りの物件があります!不動産投資のチャンスです」なんて言ってくる場合があります。
けれど、東京都心の不動産の利回りはせいぜい2%~3%程度です。
実際に、高利回りの物件の場合もありますが、高利回りの物件は、ほとんどの場合、築年数がかなり経過している物件で、修繕費などがかかるなどキャッシュフローは薄利です。
相手が、表面利回りで話をしているのか?実質利回りで話しているのか?を確認するのは当たり前ですが、しっかりと自分でもキャッシュフロー表を作って、どのくらいの収益が見込めるのかを検討しましょう。
3.「家賃保証がありますよ」
不動産投資する際に注意すべきこととして『空室リスク』がありますが、家賃保証があることを持ち出してくる詐欺師もいます。
家賃保証を利用する際にはサブリース契約を締結することが多いですが、サブリース契約は不動産会社に有利な契約内容になっており、家賃の減額や途中解約などが不動産会社の都合で行われることがあります。
家賃保証は必ずしも収入を保証するものではないと心得ましょう。
4.「将来確実に値上がりますよ」
詐欺の手口として、昔から使われている常套文句ですが、不動産投資の詐欺においてもやはり使われる言葉です。

逆にそんなに美味しい物件なら、「なぜ自分で投資しないんだろう?」と疑問に思いますよね。
実際に、不動産は保有するだけで固定資産税や管理費用が発生するので、値上がりすることを期待して保有し続けるにしても、その間にも出費がかさむことになります。
5.「不動産投資で節税対策ができますよ」
これもよく出てくる誘い文句です。
たしかに不動産投資が節税につながることはあります。
けれど、所得税や住民税が節税になるということは、『不動産投資の事業自体は赤字になっている』ということです。
赤字分は、貯金や給与収入から補てんしなければならないので、節税ができても収支は赤字ということもあり得るのです。
不動産投資をする意味は、多くのキャッシュフローを得ることにあります。
キャッシュフローをしっかりとシミュレーションし、「不動産投資することで本当に利益があがるのか?」をしっかりと自分で確認しましょう。
6.「不動産投資は年金代わりになりますよ」
不動産投資で失敗する人の多くに共通することですが、不動産を購入することにエネルギーを使ってしまい、その後の運用をきちんとシミュレーションできない人が案外多いです。
不動産は、築年数が経つにつれて修繕費などの維持費がかかるようになります。
苦しい不動産経営をしている人の中には、耐用年数が過ぎて管理費がかさみ、利回りが悪くなった不動産を抱えて四苦八苦している投資家もいます。
年金代わりになると言われただけで、長期的なシミュレーションをしないままに契約をしてしまっては詐欺師のいいカモです。
7.「他にも購入希望者がいますよ」
購入や手付金の支払いを急がせるためにこのようなことを言う詐欺師もいます。

こういった手口の詐欺は、手続きを行った後に連絡が取れなくなったり、何かしら問題があり、トラブルに巻き込まれる可能性が高い物件を売りたい場合が多いようです。
よほど買い慣れているベテランの不動産投資家でない限り、即決で不動産を購入して利益を上げている人はそんなにいないでしょう。
みんな、目当ての不動産をいくつかピックアップして、シミュレーションしたり、実際に出向いてリスクを考えたりしているのです。
不動産投資は、早い者勝ちという訳では必ずしもないことをしっかりと意識して検討するようにしましょう。
不動産投資詐欺の事例と対策

不動産投資詐欺で使われる常套文句をいくつか紹介しましたが、実際の詐欺では、こんな言葉がモロに使われることはありません。
用意周到で巧みだから、しっかりした人でも詐欺に遭ってしまうのです。
ここでは、最近、急増中の不動産投資詐欺の事例を3つほど紹介します。
女性の被害者続出のデート商法
いわゆる婚活サイトで知り合った男性から不動産投資をすすめられるケースです。
この手の詐欺は、時間をかけて相手に接近し、すっかり信用させたうえで、いかにも自分たちの将来のためという体を装って不動産投資の話をしてきます。

狙われやすいのは、
- 大手企業に長年勤務している女性
- 公務員や医療従事者
ピンと来た人もいると思いますが、これらの人は属性が高くローンの審査に通りやすい人たちです。
円高にかこつけた海外不動産詐欺
『円高』が顕著になり、こちらも被害報告が急増しています。

こうした物理的な距離や言葉の壁を利用した詐欺は、グローバルになった現在ならではの手口とも言え、さらに狡猾になる可能性があります。
海外の不動産投資家の中には、写真を見ただけで即決する人もいます。
しかし、実際に自分の目で確かめられない不動産は、長年の付き合いがあり、相手の素性や実績をよく知っている相手、信頼できる筋から紹介された営業マンなど、よほどの理由がない限り手を出すのは危険です。
法的にギリギリのところを攻めてくる
ご紹介した詐欺の手口は、いずれも違法行為ですが、中には、グレーゾーンだったり、法的には白の場合もある詐欺行為もあります。
例をあげると、
- 「ほぼ満室」という謳い文句のマンション。実は、入居者の8割が悪徳業者の社員で、購入後に抜けてしまい、がら空き状態に。
- 近くにあった有名大学のキャンパスが閉鎖するのが決定していることを伏せて、「満室」で売り出す。3月になってキャンパスが閉鎖すると一気にががら空きに。
- 全20室のマンションのうち2部屋を内見。とてもきれいな状態だったので、契約したら残りの18室はボロボロ。
不動産を購入する際は、住人情報や近隣情報など、集められる情報はできるだけ集めておくことをおすすめします。
もう一つの詐欺対策としては、登録番号の確認です。
不動産会社ならば、必ず宅地建物取引業者の登録をしています。
この免許は、ほとんどの不動産会社で店内の見える所に掲示されていると思うので、もし見当たらなければ悪徳業者である可能性が高いです。
また、免許証を見つけたら、登録番号だけでなく交付年月日も確認しましょう。

他にも、デメリットなどについても、気になったことはなんでも質問してみましょう。
その質問への対応が不誠実なようなら、たとえ悪徳業者でなくても、不動産購入後の運用がしにくくなる場合があるので、購入を断った方がいいでしょう。
詐欺だと感じたら不動産投資に詳しい第三者に相談を!

不動産投資をする際に、「これは詐欺ではないか?」また、「詐欺に遭ったかも」と感じたらすぐに専門家に相談しましょう。
ここでは、万が一、詐欺に遭った場合に相談すべき専門家をピックアップしてご紹介します。
- 弁護士
- 不動産投資コンサルタント
- ファイナンシャルプランナー
- 金融機関の資産運用相談窓口
弁護士
国土交通省は「免許行政庁」へ相談することを推奨しています。
ただ、詐欺をするような業者は、まともな会話が成立しない場合も多いので、個人的には、弁護士に相談して、まずは法的な観点から話を詰めることをおすすめします。
ただ、注意が必要なのは、NPO法人を装った詐欺業者が、被害相談受付や弁護士紹介をしていたりもします。
信用できる筋から紹介してもらうのはいいですが、それが難しいなら、各都道府県にある弁護士会が運営している「法律相談センター」を利用しましょう。
不動産投資コンサルタント
不動産投資コンサルタントは、不動産投資の知識や経験が豊富で、物件の選び方から運用方法までアドバイスを行ってくれます。
不動産投資コンサルタントには、以下のような内容の相談ができます。
- 物件の選び方
- 信頼できる不動産投資会社の選び方
- 融資
ただし、不動産投資経験の浅い投資家が不動産投資コンサルタントと名乗って、高額な依頼料を請求してくる場合もあるので注意が必要です。

不動産コンサルタント技能登録証を保有している専門家は、宅地建物取引士や不動産鑑定士、1級建築士として5年以上活動している人です。
実務経験も豊かなので、信頼できる相談相手と言えるでしょう。
ファイナンシャルプランナー
最近は家計の見直しなどでお世話になっている人も増えてきている『ファイナンシャルプランナー』も、資産運用やライフプランの作成、保険の相談などお金に関する様々な相談にのってくれるので、活用するのもありでしょう。
不動産投資に関してはもちろんのこと、例えば、自己資金を作りたいといった資金計画などについてもアドバイスがもらえます。
ファイナンシャルプランナーには1~3級までの階級がありますが、3級はファイナンシャルプランナーの入門試験なので、最低でも2級以上もしくはAFP(日本FP協会が認定しているファイナンシャルプランナー)に相談しましょう。
もし、AFP以上の資格を有しているファイナンシャルプランナーに相談したいのであれば、CFPという世界24カ国で認められた世界水準のファイナンシャルプランナーもいるので、探してみてください。
金融機関の資産運用相談窓口
金融機関の資産運用相談窓口にも、安心して相談ができる資産運用の専門家がいます。
資産運用計画や返済計画など、より具体的な資産運用のイメージを掴めるだけでなく、友好的な関係を築いておくと、資産運用の際の融資を受けやすくなるというメリットもあります。
まとめ
不動産投資は、初心者でも比較的始めやすい投資なので、その分初心者を狙った詐欺が多発しています。
詐欺に遭わないためには不動産投資についてまずは勉強しよう
不動産投資詐欺の手口はどれも人の心の隙にうまく入り込んでくるような、甘い誘い文句で近づいてきます。
そんな時に、「儲け話はそんなに甘くない」と冷静に対応できるように心の余裕を持つことが大切です。

また、不動産投資で成功したいのであれば、まずは書籍を読んだり、セミナーに参加して、不動産投資の知識を身に付けましょう。
上記にあるように、不動産会社が開催している投資セミナーは、不動産投資のノウハウを効率的に得ることができるのでおすすめです。
参加料も無料のものがほとんどなので、ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか?