不動産をなるべく安く購入したいとお考えの方は、任意売却物件の購入に興味がある人も多いのではないでしょうか?
任意売却物件は、一般的な物件より安く購入できるというメリットがありますが、普通の物件とは性質が異なるため、購入の際に注意すべきポイントがいくつかあります。
そこで今回は、任意売却物件を購入するメリットや購入の際の注意点について詳しく解説していきたいと思います。
任意売却物件の購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
任意売却物件の購入を検討しているなら知っておくべきこと

不動産を探して任意売却物件と表記してあるのを見つけたり、あるいは、不動産会社から任意売却物件を勧められた経験はありませんか?
任意売却物件の中には、とても魅力的な物件もありますが、任意売却物件には注意すべき事項を押さえておかないとトラブルに発展することも少なくありません。
任意売却物件とは?
任意売却物件とは、借金を返済できなくなった売主が不動産を売却して借金を返済するために売り出した物件のことです。
もう少し詳しく説明すると、不動産を担保に住宅ローンや借金をした場合、借りた債務者が何らかの理由で返済を滞納したりした場合、金融機関などの債権者はその担保にした不動産を差し押さえて、裁判所に競売を申し立てます。
任意売却は、裁判所で不動産を競売にかける前に、債権者と話し合いをして、一般の不動産販売と同じように売却することを言います。つまり、任意売却は「債権者のために」行われる売却なので、基本的に債権者の都合が優先されます。
このように、任意売却物件は何らかのトラブルを抱えたまま購入することも多く、素人が購入するにはリスクが高いです。
任意売却物件を購入するのにメリットはあるか?

いろいろと難しい点が多い任意売却物件を購入するのは、ある程度不動産売買に慣れてからがいいと思いますが、一部の人が任意売却物件を購入していることもまた事実です。
それには、任意売却物件ならではのメリットがあるからです。ここでは、任意売却物件を購入する際のメリットについて紹介します。
任意売却物件の購入メリットはその価格にあり
一般の不動産物件購入と比較した際の任意売却物件の最大のメリットは、一般の不動産よりも安く購入できることです。
具体的に言えば、同じような条件の一般の不動産売買価格より3割程度安く購入することができます。つまり、一般の不動産取引で売買価格が3,000万円の場合、任意売却物件であれば、2,100万円程度で購入できるのです。
安く購入できる理由としては、任意売却が競売にかけられるまでの限られた期間内の売却であったり、瑕疵担保責任が免責されるといったことが挙げられます。
任意売却物件を購入する際の注意点

購入価格だけを見ると非常に魅力的な任意売却物件ですが、いろいろと条件がついているだけにトラブルも多いようです。
任意売却物件を購入する際に注意すべき点としては、次の5つがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
白紙解除の可能性がある
任意売却物件は最悪の場合、購入できないという可能性もあります。
どういった場合にこのようなことが起こるかと言うと、債権者が複数いる場合、売却額の配分に関して債権者同士で協議が行われますが、その協議で債権者同士が合意に至らない場合、債権者は抵当権を外すことを承諾しません。
債権者が最後の最後まで協議ができるように、任意売却物件の売買契約書には、白紙解除ができるように特約が入っています。
任意売却は競売の場合と違い、債権者への返済の配分はすべて債務者と債権者との話し合いで決められます。
債権者が1社の場合なら、基本的に売却額のほとんどが債権者の手元に渡るので、白紙解除になるまでもめることはありませんが、債権者が複数いる場合は、土壇場で債権者が売却を許さないケースがあると心得ておきましょう。
次のような任意売却物件は、夜逃げされたり、白紙解除になる可能性が特に高いので、不動産購入初心者はまず手を出さないようにしましょう。
- 債権者が複数いる
- 売却額が安い
安く購入できるというのは、購入者にとって大きな魅力ですが、購入額が安いということは、債務者から見れば借金の残債が多く残るという可能性が高くなり、夜逃げされる可能性も高くなると考えましょう。
また、購入価格が安いと、複数の債権者がいた場合、配分で揉める可能性も高くなり、結局、白紙解除されて、物件を購入できなくなるということも起こりやすくなります。
売主が夜逃げする

任意売却物件というのは、売主からしてみれば借金返済の糧です。任意売却物件の売却が決まるということは、債務者からすると任意売却後の借金返済額が決まるということです。
つまり、任意売却物件の売却価格が売主の借金返済に充てられるのです。任意売却物件の売却価格で借金を一括返済できればいいですが、もし、それでは返済しきれいない債務が残る場合は、売却後にそれを返済しなければなりません。
残債の額がどうにも支払えないとなると、最終手段として、売主が夜逃げすることもあり得ます。
任意売却物件の場合、売却後に債務者は債権者と話し合って、残債の返済額を減らすことを行いますが、債権者が消費者金融などの手ごわい業者の場合、残債の減額交渉が難航することもありえます。
また、債務者は厳しい取り立てに合っていて、物件売却時には半分ノイローゼという状態の人も少なくありません。そのため、任意売却物件では、売主の精神状態が不安定ということも十分に考慮しておく必要があります。
さらに、一般的な不動産売買では売買契約時に手付金を支払い、引き渡し時に残金を支払いますが、任意売却物件の場合、先に手付金を債務者に渡してしまうと、それを持ち逃げされてしまう可能性があります。
そのため、任意売却物件を購入する際は、引き渡し時に一括で全額を支払い、契約時に手付金を要求されても応じないようにしましょう。
瑕疵担保が免責される
任意売却物件では、瑕疵担保責任がすべて免責されていることが普通なので、ここも注意してください。
瑕疵とは、通常有すべき品質を欠くということです。具体的には、雨漏りやシロアリ、床下の腐食などが挙げられます。
通常の不動産売買では、売主も知らなかったような瑕疵に関しても、売却後に発見された場合は、売主に対して損害賠償請求や契約解除を行うことができます。これを瑕疵担保責任といい、個人が行う一般的な不動産売買では、売主が3ヶ月の瑕疵担保責任を負うのが通常です。
けれど、任意売却は債権者のために行う売却であり、売却後に瑕疵が発見されて、契約がひっくり返ってしまうと、抵当権を抹消した債権者が困ります。また、売主には資金力がないので、損害賠償請求をしてもお金がないので意味がありません。
そのため、任意売却では売主の瑕疵担保責任はすべて免責されています。つまり、任意売却物件を購入した場合、購入後になんらかの瑕疵が見つかっても、売主に損害賠償請求をしたり、契約を解除することができないのです。
現状有姿が基本である

任意売却物件の売買では、売主に資金力がないということで、現状有姿が基本となります。
通常の不動産売却では、物件が抱えている改善可能な問題点は、引き渡しまでに解消して売却するというのが基本です。具体的には、「境界が未確定」「マンションの管理費および修繕積立金に滞納がある」などです。
債権者からすれば、これらの問題を是正できるだけのお金があるなら、借金返済に回してほしいということです。
つまり、任意売却物件を購入する際は、仮にその物件に問題があってもそれらを容認して購入しないといけません。
ここまでのお話しからも分かると思いますが、任意売却物件の場合、問題があったり、欠陥があっても、是正や修繕を売主に要求することはできません。
結局、購入後に自費で問題点のてこ入れをする必要がある場合もあり、安く購入できても結果的に高くつくという可能性もあります。
公簿売買が原則である
任意売却物件の売買は公簿売買が原則です。
公簿とは、登記簿謄本に記載されている面積のことですが、実測面積と違うことがあります。
通常の不動産売買では、実測面積と異なる可能性が高い場合は、売買契約と引渡しまでの期間に実測を行い、その差について引き渡し時に精算をします。(実測売買)
任意売却物件の場合、売買はあくまで債権者のために行われるので、実測売買ではなく公簿売買が原則になります。
というのは、任意売却の際に実測売買を許してしまうと、売買金額が契約時と引き渡し時で異なる可能性があり、債務の返済額に狂いが生じる場合があるからです。それでは債権者が困ってしまうので、任意売却物件は後から精算が生じないように、公簿によって面積を確定し売却を行うのです。
つまり、実際の面積が公簿よりも大きかったとしても、その差額を請求することはできません。
この他にも、基本債権額より低い売買価格での値引き交渉ができない、債務者の残置物がある場合があるといったデメリットもあります。
任意売却物件の購入の流れ

任意売却物件を購入する場合も、基本的に一般の不動産売買取引と流れは変わりません。
- 物件の予算や条件を決める
- 任意売却物件を専門に取扱う不動産会社で物件を探す
- 現地下見や物件内覧をする
- 購入したい物件があれば、売買価格や引渡しなどの条件を交渉
- 買付証明書を提出
- 売買契約を締結
- 決済、物件の引き渡しを受ける
なお、任意売却物件は、説明してきた通り、通常の不動産売買より制限や手続きが多くなります。ですから、住宅ローンなどを利用する場合は、事前に仮審査などの手続きを進めておくなど、随時決済できるように余裕を持って進めておきましょう。
まとめ:任意売却物件の購入は慎重に
任意売却物件は購入価格の安さが何よりの魅力ですが、瑕疵担保責任免責、現状有姿などのリスクも高い物件です。
また、任意売却物件の場合は、司法書士の費用なども債権者によって違いますが、細かく指定されていて複雑です。
初心者は任意売却物件よりも通常の売却物件を購入しよう
基本的に、任意売却物件はそっくりそのままその物件を買い取ることになります。壊れていても、何かトラブルがあっても、買主が対処するのが基本と考えておいた方がいいでしょう。
価格以外によっぽどの魅力がない限り、任意売却物件を初心者は購入しない方が良いでしょう。
ただ、好立地や今ある建物は取り壊して新しい建物を建てるなど、任意売却物件のマイナスをプラスに変えられるような見通しがあるのであれば、リスクを十分に検討した上で、購入を検討するのもありかもしれません。
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