
不動産投資は節税対策や効率的に資産運用ができるという面からサラリーマンの方々に人気ですが、不動産投資を検討中の方がまずはじめに悩むのが「一棟にするのか、区分にするのか」という点ではないでしょうか?
一棟投資と区分投資はそれぞれ特徴が異なり、明確にどちらがおすすめとは言いづらいのです。そのため、自身の投資計画や運営プランによって判断する必要があります。
そこで今回は、不動産投資における一棟投資と区分投資の違いを様々な観点から徹底比較していきたいと思います。
ぜひ物件選びの参考にしてみてください。
目次
不動産投資における一棟投資・区分投資とは?

一棟投資とは?
一棟投資とは、文字通り不動産を一棟丸ごと購入し運営していく投資方法のことです。
一棟まるごとの購入となると不動産価格も高額になるため、ほとんどの方が金融機関からの融資を受けるのが一般的です。また、賃貸経営する戸数が多く、特にタワーマンションなどになるとその数は膨大で、高い入居率を維持することができればかなりの家賃収入が期待できます。
しかし、高い入居率を保つにはそれなりの対策が必要であり、もし空室が増えてしまうと家賃収入が減り、毎月のローン返済が滞ってしまうリスクもあります。
一棟投資は得られる利益も大きいですが、その分、万が一失敗した場合の損失も大きい「ハイリスク・ハイリターン」な投資方法と言えるでしょう。
区分投資とは?
区分投資とは、物件の内の一部の部屋を運営する投資方法です。
区分投資に関しては区分所有法により詳しい定義が定められており、詳細は以下のようになります。
一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。
出典元:電子政府の総合窓口e-Gov
一棟投資に比べて購入する物件はマンションやアパートの数部屋分になるため、比較的低価格で購入可能です。ただし、その分得られる利益も収縮してしまいます。
不動産投資における一棟投資と区分投資を徹底比較
一棟投資と区分投資についてある程度理解していただいたところで、続いては両者を様々な項目ごとに徹底比較していきます。
比較項目 | 一棟投資 | 区分投資 |
---|---|---|
物件価格 | ✕ 物件価格が高い | ◯ 物件価格が安い (ワンルームであれば数百万円での購入も可能) |
立地 | ✕ 駅から遠いなど利便性の悪い物件も多い | ◯ 駅近の好立地な物件が多い |
利回り | ◯ 利回りが高い(約7%前後) | 利回りが低い(3%~5%) |
担保評価 | ◯ 担保評価が高い | ✕ 一棟に比べ担保評価は低め |
融資金利 | ✕ 金利が高い(約2%~4.5%) | ◯ 一棟に比べ低金利(約1.5%~3%) |
融資期間 | ✕ 融資期間が短い(20年~30年) | ◯ 融資期間が長い(30年~35年) |
減価償却 | △ 減価償却額が大きい(節税目的なら◯) | △ 減価償却額が小さい(節税目的なら✕) |
修繕費 | ✕ 規模が大きいため修繕費が高い | ◯ 規模が小さいため修繕費が安い |
物件の流動性 | ✕ 流動性が低い | ◯ 流動性が高い |
出口戦略 | ◯ 出口戦略が複数ある | ✕ 出口戦略が主に売却のみ |
比較表を見てもらうと分かる通り、一棟投資と区分投資はそれぞれ一長一短な特徴があり、明確にどちらが優れているとは言えないため、自身の投資目的や経営プランに応じて判断しましょう。
不動産投資における一棟投資のメリット・デメリット

一棟投資のメリット
一棟投資のメリットは主に以下の4つです。
- 収入額が大きい
- 不動産運営を全て1人で行える
- 空室リスクの分散ができる
- 土地付きで担保評価が高い
収入額が大きい
一棟投資の一番のメリットと言っても過言ではないでしょう。
一棟投資は区分投資に比べて運営する戸数が多いため、多額の家賃収入が得られます。また、家賃収入が多く動く金額が大きいためキャッシュフローも良くなり、投資資金の回収もスピーディーに行えます。
その結果、投資規模のさらなる拡大にも繋がります。
不動産運営を全て1人で行える
一棟投資は区分投資と違い、物件を管理するのは自分一人だけなので、修繕の時期や予算など全て自分で決めることができます。また、入居者需要を高めるための改修工事なども自分の計画通りに行うことができます。
そのため、物件の資産価値の維持・向上が図りやすいのです。
空室リスクの分散ができる
一棟投資の場合、管理する戸数が多いため空室の影響を受けにくいのも特徴の1つです。
区分投資は管理する戸数が少ないため空室の影響をもろに受けてしまいます。特にワンルーム投資の場合だと管理する部屋が空室になってしまうと収入が0になってしまいます。
その点一棟投資の場合、管理戸数が多いため上記のような空室リスクを分散することができます。
土地付きで担保評価が高い
一棟投資は区分投資と違い、建物と併せて土地も所有することになるため、担保評価が高くなります。そのため、金融機関からの融資を受ける際に高額融資を受けられたり、低金利やフルローンなど有利な条件で融資が受けられる可能性が高まります。
また、不動産の資産価値は築年数の経過により大幅に減少しますが、土地の評価は下がりにくい傾向にあるため、この点も融資の際に有利に働く要因になります。
一棟投資のデメリット
続いて、デメリットです。一棟投資の主なデメリットは以下の通りです。
- 必要資金が高額
- 失敗した際のリスクが大きい
- 流動性が低い
必要資金が高額
一棟投資は管理する戸数が区分投資に比べて多く、建物に付属して土地も併せて購入しなければいけないため、投資資金が高額になります。
例えば、一棟マンションを購入する場合、地域や物件にもよりますが最低でも1億円以上はかかります。また、いくら一棟物件の担保評価が高いと言ってもフルローンで組めるケースは稀で、頭金として物件価格の20%~30%程度を準備するのが一般的です。
仮に2億円の物件を購入するとした場合、その20%ですから4,000万円も自身で準備しないければいけません。
失敗した際のリスクが大きい
先ほども言いましたが、一棟投資は投資資金が高額なため、失敗した際のリスクも区分投資に比べて大きくなります。
例えば、地震や火災により管理する物件がまるごと失くなってしまった場合、これまでどれだけ好調に不動産運営を行っていたとしても、それら全てが0になってしまいます。
仮に30戸から家賃収入を得ていた場合、それらが全て失くなります。当然、高額な投資資金を融資で賄っているでしょうからローンの返済もできなくなります。
一棟投資は、投資資金が高額で複数の物件に投資することが難しいため、リスク分散ができないのが大きなデメリットと言えるでしょう。
流動性が低い
一棟投資は投資資金が高額という点から、敷居が高く流動性が低い(買い手が見つかりにくい)といったデメリットも存在します。
そのため、物件の資産価値が上がり多額の売却益が得られるチャンスがおとずれたとしても、買い手が見つからずそのチャンスを逃してしまう可能性があります。
不動産投資における区分投資のメリット・デメリット

区分投資のメリット
区分投資の主なメリットは以下の通りです。
- 少ない資金で始められる
- 好立地な物件を選べる
- 管理が楽
- リスクが低い
少ない資金で始められる
区分投資は一棟投資に比べ管理戸数が少ないため、比較的少ない資金で不動産投資を始めることができます。そのため、一般的なサラリーマンの方でも手が出しやすく人気の投資方法となっています。
実際、区分投資なら都内であっても1,000万円以下の物件も数多く存在します。
好立地な物件を選べる
一棟投資だと駅近などの優良物件を購入する場合、物件価格が数億円になるケースも珍しくなく、なかなか購入が難しいですが、区分投資だとこういった優良物件でも数千万円で購入できます。また、融資を受ければ自己資金を数百万円に抑えることができるため、一般的なサラリーマンの方でも十分購入できます。
優良物件は入居者需要が高いため、安定した利益が見込めます。
管理が楽
不動産投資を始める場合、物件を購入して終わりではなく、その後の物件管理も非常に重要になります。なぜなら、メンテナンスがしっかりされていないと物件の資産価値が減少してしまうからです。
区分投資の場合、こういった物件管理を全て管理会社に任せることができます。
具体的に言うと、毎月決められた管理費を管理会社に払い、自分ではできない清掃や設備点検などを行ってもらいます。
手間がかからないという点もサラリーマンに人気の要因の一つとなっています。
リスクが低い
区分投資は投資資金が少なく金融機関から借り入れる金額も少なくて済むため、返済のリスクが少なくなります。また、一棟投資と比べて物件を複数運営することも可能なため、リスク分散にも繋がります。
投資資金が低いということは、その分敷居が低く買い手が見つかりやすいということに繋がるため、たとえ空室期間が増えローンの返済が滞っても物件を売却すれば残債を数百万円程度に納めることが可能です。
このように、区分投資は様々なリスクを最小限に抑えることができます。
区分投資のデメリット
区分投資の主なデメリットは以下の通りです。
- 投資効率が悪い
- 空室リスクが高い
- 融資が受けにくい
投資効率が悪い
区分投資は投資資金が少なく低リスクで始められるというメリットがありますが、その分毎月の収入は一棟投資に比べて少ないため、キャッシュフローも低くなります。
大きな金額を動かしさらなる投資規模の拡大が図れる一棟投資と比べると投資効率は悪いです。
また、区分投資で複数の物件を購入するにしても毎回手続きをしなければいけないため、そういった点でも効率が悪いです。
空室リスクが高い
一棟投資の場合は物件の全部屋が空室になる可能性はほとんどないため、収入が0になることはありません。
しかし区分投資の場合、管理する戸数が少ないという性質上、空室の影響を受けやすいというリスクがあります。特にワンルーム投資の場合、管理する部屋が空室になった場合、収入が0になってしまいます。
つまり、区分投資は0か100かのリスクを抱えた投資方法と言えます。
融資が受けにくい
不動産投資を始める場合、金融機関からの融資を受ける方がほとんどですが、金融機関側も貸し倒れるリスクを防ぐために、物件の資産価値や担保評価などから不動産運営の採算性を判断します。
土地の所有権がない区分投資の場合、担保評価が低く見られる傾向があるため、融資を受けにくくなる可能性が高いです。また、低金利やフルローンなどの有利条件で融資を受けられる可能性は低いでしょう。
少しでも担保評価を上げるためにも入居者需要が高く資産価値のある物件を選ぶようにしましょう。
不動産投資における一棟投資と区分投資ではリスクが違う

続いて、一棟投資と区分投資のリスクの違いについて解説していきます。
一般的に、大きな資金を扱う一棟投資のほうがリスクが大きいと思われがちです。実際に、本記事でも一棟投資はハイリスク・ハイリターンな投資方法だと解説しました。これは間違っていません。
しかし、空室リスクの分散という点では一棟投資の方に軍配が上がります。何度も言いますが、一棟投資の場合は管理戸数が多いため、1部屋あたりの空室の影響を受けにくいからです。
ただし、これはあくまで空室リスクの話です。
地震や火災などが原因で建物自体が倒壊するリスクを考えた場合、複数の物件を運営しやすい区分投資の方がこういったリスクを分散することができます。
このように、不動産投資には様々なリスクがあり、一棟投資と区分投資においてもこれらのリスクは一長一短な面があり、どちらが優れているとは一概には言えません。
それよりも、両者にはどういったリスクがあるのかをしっかりと把握しておくことが重要なのです。
不動産投資の初心者には一棟投資と区分投資どちらがおすすめ?

これまで、一棟投資と区分投資のメリットやデメリットなどを比較してきましたが、これらを踏まえると、初心者が不動産投資を始める場合、投資資金やリスクが少なくて済む区分投資の方が適しているようにも思えます。
一方で、担保評価が高い一棟投資も好条件で融資が受けられるため魅力的に思えます。
それぞれの投資方法にはメリットやデメリットが存在し、リスクも異なるため、絶対的にどちらがおすすめとは言い切れません。
つまり、不動産投資を始める前に自分にはどちらの方が適しているのかを投資目的や経営プランなどから考え、さらに、リスクとリターンを天秤にかけた上でどれぐらいの利益を得たいのかなども総合的に考えてから判断する必要があるのです。
まとめ
一棟投資と区分投資を比較解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
本記事を読んでもらうと分かる通り、一棟投資と区分投資ではどちらが優れているという明確な答えは存在しません。
それよりも、両者にはどのような特徴があり、自分にはどちらが適しているのかをしっかりと考えて判断することが重要なのです。
不動産投資を検討中の方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。