不動産投資を始めるなら気をつけてほしいのが、「デート商法」です。
デート商法とは、恋愛感情を利用して、高額な商品やサービスを契約させる商法のことです。

不動産もデート商法でよく取り扱われる商品で、被害に遭った人は経済的にも精神的にも大打撃を受けます。
そこで今回は、不動産投資を目的としたデート商法の手口や事例、騙されやすい人の特徴、被害に遭った際の対策などをご紹介します。
目次
不動産投資を目的としたデート商法の最新手口

従来のデート商法は、異性の魅力を利用して、店舗に呼び出し、高額商品を買わせるというものがほとんどでした。
そのため、デート商法と聞くと、「商品を買った途端に相手と連絡が取れなくなる」とった手口を想像する人が多いようです。
しかし、最近の手口はより巧妙になり、取り返しがつかなくなる事態になるまで、騙されている本人も気づかないという状況が起こっています。
そこで、不動産投資におけるデート商法の最新手口をご紹介します。

①アプリやSNS、インターネットを活用して出会う
以前のデート商法は、パーティーやイベント、街頭での声掛けが中心でしたが、SNSや婚活アプリの利用者が増えるにつれて、こうしたサービスを利用して知り合うケースが急増しています。
一般人を装っているので、すぐにはデート商法とは気づきにくいのですが、次のような特徴に当てはまれば少し警戒したほうがいいでしょう。
- プロフィール写真は美男・美女だが、写真の数が少ない。
- ハイスペックなのに、相手の年齢、趣味などにこだわりが少ない。
- 「まだ慣れません」「上京したばかり」など初心者アピールをしている。
- 自分の仕事について詳しく話さない・あいまいにごまかす。
②すぐには勧誘せず、デートを重ねて信頼を得る
今までのデート商法だと、「会いたい」と言われて、会ったら最後、長い時間勧誘を受けて、根負けして買うというものでした。
ところが、最近のデート商法は、実際に出会ったあとでも何回か食事やデートを重ね、関係を深めていき、信頼させるという手口が増えてきています。

関係を深めるために、場合によっては、結婚をちらつかせたり、肉体関係を持つことさえあります。
③徐々に商品の話を持ち出し、興味を持たせる
相手の信頼を得られたと分かると、業者は商品の売り込みを始めます。
不動産投資を促す際にデート商法でよく使われるのが「結婚」という言葉です。

とはいえ、この段階でもまだ強く売り込むことはあまりありません。
相手が不動産投資そのものに興味を持つか、もしくは、「この人が言うならやってみようかな」と思った場合に、次のステップへと進むのです。
④店舗に呼び出して勧誘する
相手が契約をする意思を示すと、「お世話になった人」や「上司」を紹介するといって、別の場所に呼び出し、契約へと持ち込みます。
ここで相手が不安になるなどして、断ろうとすると、「信じてほしい」「すでに先方に契約すると伝えてしまった」などと、安心させたり、同情を引いたりして契約へと持ち込みます。

⑤契約後もしばらくは恋人関係を続ける
従来のデート商法は、契約した途端に連絡が途切れるということが多かったのですが、最近のデート商法は、契約後も1週間から2週間ほど、変わらずに関係が続きます。

相手を電話や対面で勧誘したり、店舗に呼び出して契約させる行為は、アポイントメントセールスや訪問販売などにあたります。
こういった契約の場合、無条件で一方的に契約を解除できる「クーリング・オフ」という制度を利用することができます。
ただし、クーリング・オフ制度は契約書を渡された日を含めて8日以内に書面にて解除の旨を通知しないと効力がなくなります。
このように、最近のデート商法は、「相手を信頼させる」ために、非常に多くの手間をかけています。
さらに、ここまで関係を築いていると、いざ相手を訴えても「向こうが付き合っていると勝手に勘違いした」と言い逃れされ、違法であるという立証も難しくなります。
デート商法で不動産投資してしまったら契約は取り消せるの?

昨今のデート商法は巧妙なので、騙されたと気づくまでに時間がかかることもあります。ただ、気づいた場合は、直ちに契約を解除したいですよね。
ここでは、デート商法で騙されたと思った場合に取るべき対策についてご紹介します。

30歳の独身男性。婚活サイトで知り合った女性と何度か食事に行ったのですが、その女性から将来のためにと言って、ワンルームマンションへの投資の話を持ち出されました。結婚の意思もあることを言われたので、信じて銀行でローンを組んでワンルームマンションを購入。その後、女性との連絡が取れなくなった。
契約を取り消し、ローンを支払わないでいいようにしたいが、それは可能なのか?
典型的なデート商法の手口ですが、この場合はただちに契約が取り消されることはありません。
具体的に解説すると、成人が締結した契約は「本人の自由意志に基づいてなされたもの」と解されるのが原則です。
そのため、「購入したマンションの説明に虚偽があった」や「購入する際に相手から脅迫をうけた」といった民法上の詐欺や強迫に該当するような事情でなければ、たとえデート商法でも契約を取り消すことはできません。


もし、クーリング・オフ制度が適用できれば無条件で解除できます。
ただし、業者側もクーリング・オフ制度のことは知っているので、その後も関係を続けたり、クーリング・オフ期間が過ぎるまで連絡を取れなくすることもあります。
とはいえ、クーリング・オフは解約をする旨を「書面」で相手に通知するので、はがきなどに解約の旨を記載し、証拠を残すためにはがきの両面をコピーして控えとして保管しましょう。
クレジットで契約した場合は、販売事業者とともにクレジット会社へも同時に通知します。
郵便局で「特定記録郵便」か「簡易書留」にして送付し、受領証を保管しておくことが望ましいです。

- 契約日(申し込み日)
- 販売業者名
- 担当販売者氏名
- 商品等の名称
- 契約金額
- 契約者氏名
- 住所
- 電話番号
- 契約の解除または申し込みの撤回の旨
- 支払金額の返金(既に金銭を支払った場合のみ)


手付解除とは、支払った手付金を放棄して契約の解除をすることです。ただし、物件の引き渡しが完了していると、この方法も使えません。
こうなると、裁判に持ち込むことになります。
過去に投資用マンションが対象になったデート商法では、マンションの購入額から処分価格を差し引いた金額や弁護士費用などが損害として認められた判例もあります。
この事例では、男性販売員が女性にマンションを購入させましたが、男性は自分に婚姻歴があることや子どもがいることを隠し、女性に結婚を意識させていた事実があったようです。

一般的に、顧客が金融機関から融資を受けて不動産を購入する場合、金銭消費貸借契約と売買契約は別個の契約になります。
そのため、金融機関は不動産についての調査や説明の義務まで負うものではなく、顧客が不動産を購入して損害を被った場合でも、金融機関は責任を負わないのが原則になります。
しかし、デート商法による被害や訴訟が近年増えていることもあり、消費者契約法が改正され、2019年6月15日から施行されています。
この新法は果たして、デート商法の被害に遭った場合の救済に期待できるのでしょうか?

当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。
このような状況において、締結された契約は取り消すことができますが、弁護士の中には、「社会生活上の経験の乏しさ」や「当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げたこと」をどう立証するのか疑問を呈する方もいます。
つまり、デート商法で不動産投資詐欺に遭った場合、契約を取り消すのが簡単ではないというのが現状なのです。
デート商法で不動産投資詐欺に遭いやすい人の特徴

デート商法かな?と思うような場面に遭遇したら、早めに手を打つことが大切です。
では、そもそもデート商法で騙されやすい人とはどんな人なのでしょうか?
以前は、男性が被害者になることが多かったのですが、最近では女性も狙われますから、女性の方も安心できません。

- 中途半端に自分に自信を持っている。
- 欲求不満が強い。
- 友だちがいない。
- みんなに良い顔をしたがる。
中途半端に自分に自信を持っている
デート商法を仕掛けてくる業者はイケメンや美女が多いのですが、自信がない人は「自分に声を掛けてくるなんておかしい」と思うので、案外騙しにくいようです。

そういう人は、イケメンや美人がよってきても「おかしい」とは感じません。
さらに、プライドが高いと、自分が騙されたと認められないので、あれこれと理由をつけて正当化し、騙されていないと思い込んでしまうようです。
欲求不満が強い
恋人がいなかったり、いたとしても上手くいっていなかったりする状態で、優しくしてくれる異性に惹かれてしまう人なども要注意です。

満たされない欲求は多かれ少なかれ誰にでもありますが、その心の隙間を他人に埋めてもらおうとすると、その相手に依存してしまうことになります。
友だちがいない
困った時に忠告してくれる友人がいないと物事を判断するための視野が狭くなり、結果的に騙されても気づけなくなります。
みんなに良い顔をしたがる
みんなに嫌われたくなくて、NOと言えない人も騙されやすいです。

もし、喜ぶ人がいるなら、そんな人とは付き合わないほうがマシです。
デート商法の被害にあったら誰に相談すべきか?

デート商法の被害に遭ってしまったら、然るべき専門機関に頼るのがベストです。
ここでは、デート商法の相談窓口になっている機関を2つ紹介します。

- 相手とのLINE、メール等のやり取り、婚活サイトのプロフィールなど
- 業者との連絡のやり取りの記録、パンフレットや契約書類、会社ホームページなど
- これまでの経緯を時系列純にまとめた資料
デート商法の際の相談窓口① 消費者ホットライン(局番なしの188)
消費者ホットラインとは、消費者庁が設置している全国共通の消費者トラブル相談窓口です。
局番なしの「188」に電話し、ガイダンスに従って操作することで、最寄りの消費相談窓口に電話をつないでくれます。
デート商法の際の相談窓口② 法テラス
法テラスとは、国が一般市民の法律トラブルサポートのために全国に設置している施設です。
電話で問い合わせると、内容に合わせた適切な窓口を無料で紹介してくれます。

収入が一定以下の人は、申請すれば無料で法律相談も行ってくれるので、利用してみてもいいでしょう。
さらに、一人だけだと「個人の事情」と捉えられてしまいがちなデート商法ですが、複数の人が同様の手口で、同じ人物・会社とトラブルになっているのではれば、集団訴訟となることもあります。
そうなると、被害者同士で証言を集めることができ、違法なデート商法であることの証明を有利に進められる可能性が高くなります。
まとめ:デート商法の被害にあわないために、不動産契約時は細心の注意を!!
法改正も行われましたが、未だにデート商法による不動産投資詐欺の被害者は増加しています。

そのため、「デート商法?」と少しでも感じたら然るべき窓口に相談し、早めに手を打ちましょう。
この記事が、少しでも、デート商法による不動産投資詐欺の予防・対策のお役に立てば幸いです。
なお、不動産投資の詐欺については、以下の記事で詳しくまとめているので、セットで読んでみてください。