不動産投資は他の投資に比べて、「失敗するリスクは低い」とされていますが、万が一、失敗した場合は損失が大きいので、決して油断はできません。


無理なく返済できる範囲にローンを抑えることが重要ですが、
その際の目安となるのが『返済比率』です。

そこで今回は、不動産投資で重要な「返済比率」について、目安や計算方法など徹底解説します。
目次
不動産投資における返済比率とは何か

返済比率とは、家賃収入に占めるローン返済額の割合で、賃貸経営の安全度を表しています。
返済比率を求める計算式は次の通りです。
仮に、家賃収入が毎月100万円でローン返済額が毎月50万円なら、返済比率は50%です。


不動産投資では、設備の修繕や交換、税金や入居者募集のための広告費など、様々な費用が発生します。
これらの費用は、ローンを返済して残ったお金で支払わなくてはいけません。
また、空室が増えると家賃収入が減るので、返済比率が上がり、手元に残るお金は少なくなります。

上記の費用を家賃収入で賄うことができなければ、自己資金から賄うことになるので、キャッシュフローがどんどん悪くなるという「負のスパイラル」に陥ってしまうのです。
安全な不動産投資の目安は?返済比率をシミュレーションしてみよう

毎月の家賃収入に対する経費は20%、空室割合は10%~15%を目安に考えるのが一般的です。
では、返済比率が「40%」「50%」「55%」「60%」の時の収支を実際にシミュレーションしてみましょう。
- 40%以下:安全
- 50%以下:比較的安全
- 50%~60%:やや危険
- 60%以上:危険

返済比率40%の場合【安全】
- 家賃収入(月額):100万円
- 経費(月額):20万円
- 空室損(月額):10万円
- 返済額(月額):40万円
- 差し引き合計(月額):+30万円
返済比率を40%以下に抑えられると、月のキャッシュフローが家賃収入30%以上残るので、突発的な出費にも備えられます。

この水準の物件を獲得するには、地方物件を丹念に探し、競争相手よりも早く購入するスキルを磨く必要があります。
さらに、日頃から良い人脈作りを心掛け、いち早く情報をキャッチするネットワークを作っておく必要があるでしょう。
返済比率50%以下の場合【比較的安全】
- 家賃収入(月額):100万円
- 経費(月額):20万円
- 空室損(月額):10万円
- 返済額(月額):50万円
- 差し引き合計(月額):+20万円
空室損を織り込んだ上で返済比率50%なら、空室が出たり修繕経費がかかっても収支は回せます。

返済比率50%程度であれば、市場に出ている地方の物件などで見つけられますが、東京都心や神奈川では難しいでしょう。
返済比率50%~60%の場合【やや危険】
- 家賃収入(月額):100万円
- 経費(月額):20万円
- 空室損(月額):10万円
- 返済額(月額):55万円(返済比率55%)
- 差し引き合計(月額):+15万円

この水準の物件は、月のキャッシュフローの余力がほとんどないので、突発的な修繕費用などが発生すると単月では赤字になりやすいでしょう。
そのため、常に危機意識をもち、コストを圧縮することを考えて運営をする必要があります。
返済比率60%の場合【危険】
- 家賃収入(月額):100万円
- 経費(月額):20万円
- 空室損(月額):10万円
- 返済額(月額):60万円(返済比率55%)
- 差し引き合計(月額):+10万円
返済比率が60%になると、月のキャッシュフローの余力はほぼゼロと考えていいでしょう。

ただ、市場にはこのレベルの物件がゴロゴロあります。
特に、地銀から4.5%の利率で借り入れて購入した方の多くは、この水準を超えています。

そのため、初心者の方は特に、この水準で不動産投資を始めるのはやめましょう。
不動産投資におけるキャッシュフローと返済比率の関係性とは



また、返済比率が低いということは、「それだけ無理のないキャッシュフロー」と言えます。
ここでは、無理のない返済額をキャッシュフローの側面から考えてみましょう。
減価償却期間終了後のキャッシュフローから考えよう
キャッシュフローとは、現金の流れを意味します。

不動産投資では、「将来いくらで物件が売れるのか?」ということよりも、良好なキャッシュフローで無理なくローンを返済していくことが重要視されています。

キャッシュフローの計算式は、次の通りです。
減価償却費が経常利益にプラスされるのは、不動産を購入した場合、その購入費用を数年に分けて経費として計上するため、実際の出費は伴わないからです。
※詳しくは「不動産の減価償却ってどうなってるの?計算の仕方と注意点」を参考にしてみてください。

ただし、減価償却期間を超えると減価償却費を計上できなくなるので、一気にキャッシュフローが悪化する可能性があります。
そのため、支払い計画を立てる際は、次の2点を意識しましょう。
- ローン返済期間が減価償却期間を超えないように設定する
- 償却期間後にローンが残っていてもキャッシュフローに無理がないような返済比率を目指す
返済比率50%以上でも不動産投資を成功させる方法

繰り返しになりますが、市場に最も出回っている物件のほとんどが返済比率50%以上です。


対策としては、主に次の2つがあります。
- 返済比率を下げる
- 金利の上昇に備える
返済比率を下げる
返済比率は固定されたものではないので下げることも可能です。
返済比率を下げるには、次のような方法があります。
不動産を購入する際に、自己資金の割合を多くしましょう。
具体的には、頭金を多く入れて融資額を下げるのです。
さらに、返済途中でも余裕があるなら「繰り上げ返済」を行い、返済比率を下げていきましょう。
ローン返済額の中には金利も含まれているので、金利を下げることで返済比率を下げることもできます。
金利交渉や借り換えを検討してみましょう。
ただし、借り換えを行うと違約金が発生する場合もあるので、融資を受ける前に、契約書の内容をきちんと確認し、理解しておきましょう。
減価償却期間が長い物件の場合、返済期間を長くすることで月々の返済額を減らすことができます。
つまり、返済比率を下げることができるのです。
安く物件を購入することができれば、それだけ借入金も少なくて済みます。
さらに、物件の購入費用が下がれば利回りも良くなるので、少しでも安くできるように交渉することは大切です。
金利の上昇に備える
返済比率が上がってしまう要因の一つに『金利の上昇』があります。




金利が0.5%~1%上昇しただけでも返済額は1部屋分の家賃くらい増額する場合もあるので、これはかなりのダメージです。
そのため、金利が上昇してもそれに耐えうるだけの対策を考えておく必要があります。
具体的には、「金利が上昇したらすぐに繰り上げ返済をして返済額を減らす」「可能であれば借り換えを検討する」などが考えられます。


まとめ
不動産投資における「返済比率」の重要性についてご理解していただけたのではないでしょうか?
返済比率に関しては、次のポイントを意識しましょう。
- 元本の返済以外も含むのか
- 金利も含むのか
- 諸経費も含むのか
ローンを組む際は、本当に余裕を持って不動産運営できる返済額かどうか冷静に考えましょう。