J-REIT(以下、REITと略)の重要指標の一つに『FFO倍率』があります。
FFO倍率とは、収益力に着目し、REIT銘柄が割高か割安かを考えるための指標であり、REITを行う上でとても重要になります。

そこで今回は、FFO倍率の意味や計算方法など徹底解説していきたいと思います。
目次
FFO倍率とは

不動産投資は、不動産を運営することで得られるキャッシュフローが重要になります。
そのため、「何年で元がとれるか?」を判断する際に参考になるFFO倍率は重要な指標となります。
REITにおけるFFO倍率の計算式は次の通りです。
この式を正しく理解するために、まず「FFOとは何なのか?」から解説していきます。
FFOとは?
FFOとは『Funds From Operation』の略で、REITからどれだけのキャッシュを生み出されているのかを表した指標になり、計算式は次の通りです。

そのため、実際に稼いだお金(利益)を求める際には、減価償却費を足し戻します。
また、FFO倍率はFFOに対して投資口の時価総額が何倍かを算出したものです。
もしくは、FFOと投資口の時価総額をそれぞれ投資口総数で割って、「1口あたりFFOに対して投資口価格が何倍か?」を算出したものと考えてもいいでしょう。

FFOが7億円のREITが1万口の投資口で構成されていて、投資口価格が35万円だとすると、FFO倍率は次のようになります。
【1口あたりFFO=7億円÷1万口=7万円】
【FFO倍率=35万円÷7万円=5倍】

FFO倍率と減価償却費

REITでFFO倍率が重要視されるのは、不動産投資が減価償却費ありきのビジネスだと言っても過言ではないからです。
そこで、不動産投資においてとても重要な『減価償却』という考え方を解説します。
減価償却費とは
例えば、1億円の不動産物件を購入するとします。
この時、買主は売主に1億円を支払うので、買主にとっては1億円の支出となります。
しかし、会計上のルールとして、不動産のような大型設備はその年に全額を経費にすることができません。

その代わり、この不動産の耐用年数が20年だった場合、1億円を20回に分けて毎年500万円ずつ経費として計上します。

不動産投資では、この減価償却があるため、会計上の利益とキャッシュフローに大きな違いが出てきます。
会計上の利益とキャッシュフローの関係性
例えば、先ほどの不動産の場合、賃料収入が年間2,000万円だったとしましょう。
すると、会計上の利益は経費500万円を差し引いた利益となり、1,500万円の黒字となります。
しかし、実際には物件を1億円で購入しているので、キャッシュフローは賃料収入2,000万円に対して1億円のマイナスですから、8,000万円の赤字です。


物件価格の1億円は前年に支払っているので、今年の支出はありません。
ところが、減価償却によって20年に渡り毎年500万円の経費を計上するというルールなので、会計上の利益は、この年に関しても500万円の減価償却費を差し引いた1,500万円の黒字になります。
一方で、キャッシュフローでは支出がないので、賃料収入2,000万円はそのまま2,000万円の黒字になります。


- 会計上の利益:1,500万円の黒字
- キャッシュフロー:8,000万円の赤字
- 会計上の利益:1,500万円の黒字
- キャッシュフロー:2,000万円の黒字
このように、不動産投資においては、会計上の利益とキャッシュフローが大きくずれます。


REITでは、毎年投資家に支払われる分配金の原資となるのは「賃料収入から生まれたキャッシュフロー」なので、会計上の利益よりもキャッシュフローが重視されるのです。
FFO倍率の見方


FFO倍率は、数字が低ければ低いほど割安とされています。


例えば、決算期ごとの当期純利益が減っていくなどして、1口あたりFFOが今後下がる場合、そのREITのFFO倍率は割安とは言いきれません。
また、FFO倍率が割安の場合に考えられるリスクとして、「物件の築年数が古い」「大型テナントの退去が決定している」「物件に競争力がない」などがあります。
FFO倍率とPER(株価純資産倍率)の違い
FFO倍率に類似しているとしてよくよく比較されるものに『PER』がありますが、FFO倍率とPERは大きく異なる点もあります。
それは、会社によって同じ業種だったとしても収益性が違うという点です。
一方、REITは投資対象がすべて不動産です。
不動産の収益性は安定していて、株式銘柄ほど収益性に大きな差異はありません。


まとめ:長期的な利益を狙うならFFO倍率は重要
REITは、長期的に安定した分配金収益を得ることを目的に始める人も多いと思いのではないでしょうか?
そういった方は、FFO倍率をしっかりと理解して、「狙っているREITが割安かどうか?」しっかりと判断しましょう。
FFO倍率だけでなく他の指標も参考にしよう
REITを比較するにあたって、FFO倍率が重要な指標であることは間違いありませんが、FFO倍率だけを見て売買の判断をするのは賢明ではありません。
REITの銘柄選択をする際には、NAV倍率や分配金利回りなど、FFO倍率以外の指標も参考にしましょう。